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2012/03/13 (Tue)
「さぁ、乗ってください。早ければ明日には着きますよ」
 促され、ルベアとオルカーン、アリアは荷台に乗り込んだ。
 レーウィスは御者台に座り、全員が乗り込んだのを確認して、馬を前に進ませた。
 町が遠ざかり、建物の影が朧にしか見えなくなった頃、アリアは突然オルカーンの布を取り去った。
「此処まで来たらもう平気よ。これつけてるのって窮屈でしょ?」
「あんたも驚かないんだな」
 思わず言ってしまってから、あ、とオルカーンが耳を寝かせる。
 アリアはきょとんとして、首を傾げた。
「も? 他に誰か居たの?」
「ディリクが」
 ルベアは反射的に答え、アリアも知り合いが居るのかと思った。
 魔獣の中で、人語を解すものは多くはないからだ。
 ルベアの答えに納得したようにアリアは数回頷いた。
「そうねー。彼なら驚かないわね」
「知り合いが居るといっていた。貴方にもいるのか?」
 アリアは思わぬことを言われた、という顔をして、うーんと唸った。
「あたしは知り合いじゃないけど……レーウィス知ってる?」
 御者台の彼は前方を見たまま答えた。
「私も知り合いではないですが……。城に一人いると聞きましたよ。貴方のほうが詳しいでしょう、アリア?」
 その会話に、ルベアは内心首を傾げた。
 城といえば王都だが、魔獣が居ると聞いた覚えはない。
 それとも何処か人目につかない場所に居るのだろうか。
 アリアは暫く額に指を当て目を瞑っていたが、不意に開くと怪訝そうに聞いた。
「貴方、アレンって知ってる?」
 ルベアとオルカーンは目を見開いて互いに顔を見合わせた。
「アレン?」
 御者台からレーウィスが怪訝そうに問いかける。
「城に入った魔獣族っていったら彼しか覚えがないもの」
「城ってまさか……魔界城?」
 恐る恐る、といった口調でオルカーンが聞く。
 ルベアには馴染みのない名前だ。
 アリアは視線を戻すと、何でもないことのように頷いた。
「じゃああんたたちは魔族なのか?」
「そうよ。……そんなに珍しいかしら?」
「おい、さっきから何の話だ」
 少し険悪になりかけた雰囲気を遮って、ルベアが怪訝そうに問う。
 オルカーンはこちらを見ると少し首を傾げた。
「言わなかったっけ? 魔界に人族は入れないんだって」
「……あぁ、だから魔族ってことになるのか。ところでそのアレンってやつはお前の何だ」
「ということはやっぱり知り合いなのね!」
 二人から視線を浴びて、オルカーンはぺたりと耳を伏せた。
「あー……友達だよ。施設に居たとき一緒だったんだ」
 何故か歯切れの悪い言い方だ。
「……南の施設?」
 僅かに眉をひそめて問われ、オルカーンが頷く。
「そいつが、探してるやつか」
「うん……まぁ、会えたら良いんだけど。とりあえず無事みたいだからそれでも良いかなぁとも思うよ」
「魔界に行けば会えるわよ」
 あっさりとアリアが言う。
 オルカーンが一度、尻尾を振った。
「そうできれば手っ取り早いんだけど。俺は移動の手段がないんだよ」
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