小説用倉庫。
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「アリア」
何か言いかけたアリアを遮って、レーウィスが声をかけた。
何、と言いかけて目を眇める。
「ちょっと行ってくるわね」
言い置いて、ひらりと馬車から飛び降りる。
視界から消えた。
馬車から出たからではない。
馬車の横にも、後ろにも影は見えなかった。
「何かあったのか?」
移動したのか、と思い御者台へと問いを投げる。
「あぁ、前方に魔獣の群れがいるようですので、アリアに散らしに行かせたんですよ」
「女の子一人に!?」
勢いよく立ち上がって、オルカーンが驚愕の声を上げた。
だが、レーウィスは軽やかに笑いながら言った。
「大丈夫ですよ。あの程度ならアリア一人で十分です」
「でも……」
「手に負えないような相手なら私が出たほうが早いんですが……彼女は馬を扱うのが下手ですので」
それでも女性一人で、と思い口を開こうとすると、不意にレーウィスが前方を指した。
「ほら、片付いたようですよ」
示された先に目を凝らす。
遠く木々の間に、茶色の髪が見えた。
向うはこちらに気づいたのか、大きく手を振っている。
無事な姿にほっとした途端、目の前の荷台にアリアが現れた。
「……大丈夫か」
驚きを押し隠して尋ねると、アリアは驚いた顔をしてから破顔した。
「ありがとう。でもあのくらいならあたし一人でも大丈夫よ」
「強いんだな」
妙に感心したようにオルカーンが呟く。
「レーウィスの方がまだ強いんだけどね。……そうだ」
ふと真面目な顔になって手を叩く。
「魔界に行きたいのならヴィオルウスに頼むと良いわよ。ディリクも良いけど、……何を要求されるか分からないしね」
「誰だ?」
聞き覚えのない名前だ。
村の人だろうかと思いながら聞いてみる。
「今はアィルの家にいるわ。見れば直ぐ分かるはずよ」
ルベアとオルカーンはまたも顔を見合わせた。
「……何か都合よくない?」
「……そうだな」
「何の話?」
きょとんとアリアが首を傾げた。
「いや……今まで全く手がかりがなかったのに、今は芋づる式にどんどん繋がっていくのが何かね……釈然としないというか」
「探してるつもりで全く近くに居なかったんじゃない?」
あっさりとアリアが言い切った。
「うーん……そうなのかなぁ。でもレインが倒れてからだよね。いろいろ情報が入るのって」
「レイン?」
アリアが聞き返す。
見れば先程とは違い、真剣な面差しだ。
心なしかその表情が硬い。
「知っているのか?」
「さぁ。知らないわ」
何気なく聞いた問いだった。
だが、アリアは硬い声でそれ以上の詮索を拒絶した。
知っているようではあるが、教えてくれそうな雰囲気ではない。
視線を下に下げて、アリアが気後れした様子で問う。
「その人、倒れたって言ってたけど、大丈夫なの?」
ルベアは虚を突かれながらも、何とか表情に出さないように答えた。
「あぁ。その為に、シオンに行くんだ」
「そう……」
何処かほっとしたような口調に、やはり知り合いなのだろうかと考える。
けれど、知っていることを隠さねばならないような何かがあるのだろうか。
取りとめもなくそんなことを考えながら、視線を外に向ける。
馬車は順調に進んでいた。
この分なら、遅くとも今日中にはつけるかもしれない。
何か言いかけたアリアを遮って、レーウィスが声をかけた。
何、と言いかけて目を眇める。
「ちょっと行ってくるわね」
言い置いて、ひらりと馬車から飛び降りる。
視界から消えた。
馬車から出たからではない。
馬車の横にも、後ろにも影は見えなかった。
「何かあったのか?」
移動したのか、と思い御者台へと問いを投げる。
「あぁ、前方に魔獣の群れがいるようですので、アリアに散らしに行かせたんですよ」
「女の子一人に!?」
勢いよく立ち上がって、オルカーンが驚愕の声を上げた。
だが、レーウィスは軽やかに笑いながら言った。
「大丈夫ですよ。あの程度ならアリア一人で十分です」
「でも……」
「手に負えないような相手なら私が出たほうが早いんですが……彼女は馬を扱うのが下手ですので」
それでも女性一人で、と思い口を開こうとすると、不意にレーウィスが前方を指した。
「ほら、片付いたようですよ」
示された先に目を凝らす。
遠く木々の間に、茶色の髪が見えた。
向うはこちらに気づいたのか、大きく手を振っている。
無事な姿にほっとした途端、目の前の荷台にアリアが現れた。
「……大丈夫か」
驚きを押し隠して尋ねると、アリアは驚いた顔をしてから破顔した。
「ありがとう。でもあのくらいならあたし一人でも大丈夫よ」
「強いんだな」
妙に感心したようにオルカーンが呟く。
「レーウィスの方がまだ強いんだけどね。……そうだ」
ふと真面目な顔になって手を叩く。
「魔界に行きたいのならヴィオルウスに頼むと良いわよ。ディリクも良いけど、……何を要求されるか分からないしね」
「誰だ?」
聞き覚えのない名前だ。
村の人だろうかと思いながら聞いてみる。
「今はアィルの家にいるわ。見れば直ぐ分かるはずよ」
ルベアとオルカーンはまたも顔を見合わせた。
「……何か都合よくない?」
「……そうだな」
「何の話?」
きょとんとアリアが首を傾げた。
「いや……今まで全く手がかりがなかったのに、今は芋づる式にどんどん繋がっていくのが何かね……釈然としないというか」
「探してるつもりで全く近くに居なかったんじゃない?」
あっさりとアリアが言い切った。
「うーん……そうなのかなぁ。でもレインが倒れてからだよね。いろいろ情報が入るのって」
「レイン?」
アリアが聞き返す。
見れば先程とは違い、真剣な面差しだ。
心なしかその表情が硬い。
「知っているのか?」
「さぁ。知らないわ」
何気なく聞いた問いだった。
だが、アリアは硬い声でそれ以上の詮索を拒絶した。
知っているようではあるが、教えてくれそうな雰囲気ではない。
視線を下に下げて、アリアが気後れした様子で問う。
「その人、倒れたって言ってたけど、大丈夫なの?」
ルベアは虚を突かれながらも、何とか表情に出さないように答えた。
「あぁ。その為に、シオンに行くんだ」
「そう……」
何処かほっとしたような口調に、やはり知り合いなのだろうかと考える。
けれど、知っていることを隠さねばならないような何かがあるのだろうか。
取りとめもなくそんなことを考えながら、視線を外に向ける。
馬車は順調に進んでいた。
この分なら、遅くとも今日中にはつけるかもしれない。
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管理者:西(逆凪)、または沖縞
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