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2012/02/05 (Sun)
 一瞬前までは誰もいなかったはずだ。
 そして。
(子供?)
 透き通るような肌に、薄い青緑の色の髪が映える。

 きれいな顔立ちをしていた。
 彼はこの場所にそぐわないような気もしたが、警戒しながら近寄っていく。

「帰る気は、無いということ?」

 隙だらけだ。
(倒せる)
 けれどこの肌を刺すような感覚。

 はるか昔に一度だけ出会ったそれに似ていた。
 その時もこのちりちりする違和感があった。

 そう、これは。
(魔法使い)
 彼ら相手に生身で勝つのは難しい。
 生身、ならば。

 けれど今のこの感覚はあのときよりさらに激しく強い。

「あんたは、誰なんだ?」

 つい口調がいつもと違ってしまっていたが、それには気づかなかった。

 問い掛けると、彼は薄く笑った。
 子供ではない表情で。
 普通の子供ならば、このような表情はしないだろう。
 それは。
 長く生きた人間の。

「僕の、問いには答えてもらえないのかな。……レイヴァル?」
「! ……どこでその名を?」
 睨みつけながら問う。

 それはもうこの世界の誰も知らない名前のはずだった。

 知っている者は皆死んだはずだった。
 そう、死んだのだ。
 なぜなら皆この手で殺したのだから。

 捨てたはずの。
 名前。

「……今は、酒星だっけ?」
 くすくす。
 表情は笑っているのに、目だけは笑っていない。

 何もかもを見透かすような。
 金色の。
「怖い怖い。そんなに睨まないでよ」
 何も言わずにいると、彼は一歩こちらに踏み出した。

「警告は……したはずだね? 君の今回の仕事を成就させるわけにはいかないんだ」
 警告。
 ではあの嵐や、馬車の故障もこの子供の所為だというのか。
 けれどこんな子供の魔法ではあんな大きな規模の嵐は起こせるはずが。

 ない、はずだ。
 なのに見慣れない金の瞳が頭の奥を揺さぶる。
「何故邪魔を……」
 言ってから舌打ちする。

 昔のような感覚が戻ってきてしまっている。
 心が死んだ状態の。
 あの時。
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