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2012/02/05 (Sun)
 夢を見た。
 大きな波が、小さな小さな船を飲み込むのだ。



 酒星の乗っていた船が転覆したと聞いたのは、その夢を見た翌朝のことだった。
 その船に乗っていたのは酒星を含めて5人。
 そして酒星を除いた4人が、その日シンズィスの浜に打ち上げられたのだ。
 船が出たのは1週間前。それで4人が無傷で、水もたいして呑まずに浜にいたことのほうが驚く。


「どういうことだよ。何であいつがいないんだ?」
 皆無傷で今は大事を取って診療所にいる。
 話を聞きに行って呆然とした。

「落ち着けよ、まだ死んだって決まってないだろ」
「俺はまだ何も言ってねぇ!」
 すごく馬鹿にした口調で薄氷が言ってくるので、つい怒鳴ってしまう。
「違うのか?」
「……煩いッ!」

「落ち着きな、ふたりとも」
「そうだよッ!今捜索隊出そうって話でてんだから、大丈夫だって!」
 声をかけてきたのは東旭と、その姉である冬杣だ。
 血が繋がっていると聞いたことがあるが、性格はほとんど似ていない。
 東旭が元気に肩を叩いてくるので、少しよろけてしまう。
「おまえ……もう少し体力つけたほうがいいんじゃないか?」
「余計なお世話だよ!」
 薄氷はいつも一言多いと思う。
 何度腹が立ったことか。

「そういやさ、昼ご飯まだ? 時間があるならちょっと出かけたいんだけど」
 薄氷が冬杣に話し掛けている。
 冬杣は切れ長の目を薄氷に向け、静かに口を開いた。
「もうそろそろできるはずだよ。……行ってみたらいい」
「そうする。お馬鹿な踏青はもう少しここにいるかい?」
「行くよッ! ていうか誰が馬鹿だ!」
「おまえ以外に誰がいるってんだよ」

 ふたりの声が遠ざかっていくのを、その場にいるほぼすべての人が微笑みながら見守っていた。
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