小説用倉庫。
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沈黙を破って声をあげたのは踏青だった。
「ちょ、ちょっと待てよ。本当に殺すのか? 本当に、もうそれしかないのか?」
「安全であるという保証はないからね」
さらりと言ったルシェイドは一歩、樹雨の方に歩を進める。
「やめろよ! 何も殺すことは……!」
「良いんです。踏青さん。……この町の皆さんには、お礼を……」
「私はお前の遺言なんか聞かないからな」
そう言ってみると、樹雨は少し困ったように微笑んだ。
「駄目だ! 樹雨を殺すな!」
踏青は走ってルシェイドと樹雨の間に割り込んだ。
両手を広げて、それでも守っているつもりなのかきつくルシェイドを睨みつけている。
「何故、邪魔をする」
「……俺の知ってる人が、俺の目の前で殺されようとしてるのに、黙って受け入れるなんてできるもんか!」
いつもの能天気さからは少しも考えられないほど真剣に、踏青は怒鳴る。
「もう、目の前で誰かが死ぬのに何も出来ないのは、嫌なんだよ!」
叫び声に、ルシェイドがどんな顔をしたのかは後ろからだったのでわからなかったけれど、ひとつ溜息をつくと剣を元の鈴に戻した。
「……わかった。今回は、君の顔を立てよう」
「じゃあ……」
嬉しそうな笑顔になった踏青に、ルシェイドはただし、と指を突きつけた。
「ひとつ、誓約をしてもらう。それが守れなければ、今度こそ、殺すよ」
「誓約?」
「……君も気がついていると思うけど、この世界にレイリジオーゼ神聖国なんてないんだ。だから、そこの出身だっていうのを吹聴されたら困る。この、島から出ないという誓約だ。守れるか」
ややあって、樹雨は静かに頷いた。
「……わかりました。確かに」
踏青は笑顔で
(本当に表情がくるくる変わる奴だ。東旭と同レベルか)
手を叩いた。
それを見てルシェイドが背を向ける。
一瞬、目が合った。
何かを。
伝えられた気がした。
ふいと視線を外すと、ルシェイドはそのまま診療所から出て行った。
手放しで喜んでいる踏青を、困ったように樹雨が見つめている。
溜息をついて、彼らに気づかれないうちに診療所を出た。
「ちょ、ちょっと待てよ。本当に殺すのか? 本当に、もうそれしかないのか?」
「安全であるという保証はないからね」
さらりと言ったルシェイドは一歩、樹雨の方に歩を進める。
「やめろよ! 何も殺すことは……!」
「良いんです。踏青さん。……この町の皆さんには、お礼を……」
「私はお前の遺言なんか聞かないからな」
そう言ってみると、樹雨は少し困ったように微笑んだ。
「駄目だ! 樹雨を殺すな!」
踏青は走ってルシェイドと樹雨の間に割り込んだ。
両手を広げて、それでも守っているつもりなのかきつくルシェイドを睨みつけている。
「何故、邪魔をする」
「……俺の知ってる人が、俺の目の前で殺されようとしてるのに、黙って受け入れるなんてできるもんか!」
いつもの能天気さからは少しも考えられないほど真剣に、踏青は怒鳴る。
「もう、目の前で誰かが死ぬのに何も出来ないのは、嫌なんだよ!」
叫び声に、ルシェイドがどんな顔をしたのかは後ろからだったのでわからなかったけれど、ひとつ溜息をつくと剣を元の鈴に戻した。
「……わかった。今回は、君の顔を立てよう」
「じゃあ……」
嬉しそうな笑顔になった踏青に、ルシェイドはただし、と指を突きつけた。
「ひとつ、誓約をしてもらう。それが守れなければ、今度こそ、殺すよ」
「誓約?」
「……君も気がついていると思うけど、この世界にレイリジオーゼ神聖国なんてないんだ。だから、そこの出身だっていうのを吹聴されたら困る。この、島から出ないという誓約だ。守れるか」
ややあって、樹雨は静かに頷いた。
「……わかりました。確かに」
踏青は笑顔で
(本当に表情がくるくる変わる奴だ。東旭と同レベルか)
手を叩いた。
それを見てルシェイドが背を向ける。
一瞬、目が合った。
何かを。
伝えられた気がした。
ふいと視線を外すと、ルシェイドはそのまま診療所から出て行った。
手放しで喜んでいる踏青を、困ったように樹雨が見つめている。
溜息をついて、彼らに気づかれないうちに診療所を出た。
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