小説用倉庫。
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漂う波間から抜け出た時。
目にしたのは鮮やかな青。
夢に漂う自分をそこから連れ出してくれたように思った。
不器用な声で。
不機嫌な顔で。
自分が救えなかったものを。
いつか夢に、見たように。
目にしたのは鮮やかな青。
夢に漂う自分をそこから連れ出してくれたように思った。
不器用な声で。
不機嫌な顔で。
自分が救えなかったものを。
いつか夢に、見たように。
思い出したくもないほど昔のこと。
すべて捨てて逃げた。
その場所に、その人たちの傍になどいたくもなかった。
涙が出るほどの憤りと。
何も出来ない悔しさと。
総ての人に向けられた憎悪が。
この身を蝕み、息を詰まらせていく。
悪意と憎悪に染まった自分からも逃げたかった。
身の内をどろどろとした何かが蠢く。
気持ちが悪かった。
辿り着いたのはほんの偶然。
「大丈夫? 名前何ていうの?」
答えられなかった。
答えたくなかった。
もう何もいらない。
「名前無いと不便だよね。えっとねーそれじゃあ……」
すべて捨てて逃げた。
その場所に、その人たちの傍になどいたくもなかった。
涙が出るほどの憤りと。
何も出来ない悔しさと。
総ての人に向けられた憎悪が。
この身を蝕み、息を詰まらせていく。
悪意と憎悪に染まった自分からも逃げたかった。
身の内をどろどろとした何かが蠢く。
気持ちが悪かった。
辿り着いたのはほんの偶然。
「大丈夫? 名前何ていうの?」
答えられなかった。
答えたくなかった。
もう何もいらない。
「名前無いと不便だよね。えっとねーそれじゃあ……」
必死に手を伸ばす。
届かない。
力すら、呪わしきこの邪眼ですら跳ね返されて。
見たことのない青年の、鎌が踏青に向かって振り下ろされる。
キィン……!
甲高い音がして青年の鎌が止まった。
酒星が両手に短剣を構えて、鎌を押し留めている。
「踏青……!」
「……ッ……どいつもこいつも……僕の邪魔をするな!」
青年が苛立たしげに唇をかみ締める。
酒星は短剣で鎌を弾く。
「一体何の騒ぎなんです。その物騒なものを収めてください」
溜息とともに酒星が言う。
「そいつが邪魔をするんだ」
「邪魔して何が悪いんだよ! 酒星を殺されたくないからだろ!」
「それでお前が殺されそうになっててどうするんだよ」
冷静に、踏青に言ってみると、赤い顔をして黙り込んだ。
「……アタシを殺しに来たんですか?」
「……? 酒星?」
眉をひそめて青年が問う。
「アタシの名前ですよ」
「……あぁ、何だ。レイヴァルか」
ひとつ納得した、というふうに青年は溜息をつくと、鎌を消した。
「何でその名前を知ってるんです」
「……なんでって……結構前に会っただろう。王都で」
警戒を緩めていない酒星の言葉に、けれど青年は首を傾げている。
「知り合いか?」
「…………もしかして、ルシェイドですか?」
「そうだよ。気づいてなかった?」
今度は酒星が肩の力を抜く。
酒星はふと顔をあげて青年を見る。
「……会ったのは、2週間前……ですよね?」
「……え?」
「会話がたぶんかみ合ってないんじゃないか?」
溜息とともに言うと、納得したようにルシェイドが手を打った。
「ああ! そういえばそうだっけ」
「アタシが会ったルシェイドは子供でしたよ」
「今は子供じゃ不便なんだ」
届かない。
力すら、呪わしきこの邪眼ですら跳ね返されて。
見たことのない青年の、鎌が踏青に向かって振り下ろされる。
キィン……!
甲高い音がして青年の鎌が止まった。
酒星が両手に短剣を構えて、鎌を押し留めている。
「踏青……!」
「……ッ……どいつもこいつも……僕の邪魔をするな!」
青年が苛立たしげに唇をかみ締める。
酒星は短剣で鎌を弾く。
「一体何の騒ぎなんです。その物騒なものを収めてください」
溜息とともに酒星が言う。
「そいつが邪魔をするんだ」
「邪魔して何が悪いんだよ! 酒星を殺されたくないからだろ!」
「それでお前が殺されそうになっててどうするんだよ」
冷静に、踏青に言ってみると、赤い顔をして黙り込んだ。
「……アタシを殺しに来たんですか?」
「……? 酒星?」
眉をひそめて青年が問う。
「アタシの名前ですよ」
「……あぁ、何だ。レイヴァルか」
ひとつ納得した、というふうに青年は溜息をつくと、鎌を消した。
「何でその名前を知ってるんです」
「……なんでって……結構前に会っただろう。王都で」
警戒を緩めていない酒星の言葉に、けれど青年は首を傾げている。
「知り合いか?」
「…………もしかして、ルシェイドですか?」
「そうだよ。気づいてなかった?」
今度は酒星が肩の力を抜く。
酒星はふと顔をあげて青年を見る。
「……会ったのは、2週間前……ですよね?」
「……え?」
「会話がたぶんかみ合ってないんじゃないか?」
溜息とともに言うと、納得したようにルシェイドが手を打った。
「ああ! そういえばそうだっけ」
「アタシが会ったルシェイドは子供でしたよ」
「今は子供じゃ不便なんだ」
「……な、なぁ……酒星殺しに来たわけじゃないのか?」
「違う。彼が生きてても僕は別に困らないから」
恐る恐る踏青が聞くと、ルシェイドはあっさりと答えた。
「え、だって金髪って……!」
「そういやアタシも金髪でしたねぇ」
「僕が探しているのはサゼンディオスのほうだ」
「……誰?」
三人が同じ表情だったからだろう。
ルシェイドは明らか内困惑したようだ。
「ここにいるはずなんだ」
「あぁ、あいつじゃないのか」
「え、薄氷知ってんのか?」
たぶん本気で言っているであろう踏青に、精一杯嫌そうな顔をしてみた。
「お前ほんっとに馬鹿だな……」
「何だよッ!」
「知ってるのか? あいつが今どこにいるのか」
ルシェイドが勢い込んで聞く。
「たぶんな。……樹雨のことだろう」
「ヘ? ……あぁ! 浜に倒れてた奴か!」
「ようやくわかったのか……」
げんなりしながら踏青を見やる。
たまに本当の馬鹿なのかと疑いたくなるが
(いや馬鹿なんだろうけど)
それでもそれなりに頭がいい事を知っているのでなんともいえない。
「……樹雨?」
「見れば違うかそうなのかもわかるだろ」
さらりとかわして、とりあえず診療所に向かう。
酒星は用があるらしく、先ほどの家のほうに帰っていった。
診療所までの道では誰にも会わなかった。
そういえばもう昼かと思い、踏青のおかげで昼飯を食べていないことに気づく。
おまけに使いたくもない力を使ってしまった。
呪わしい。
力。
能天気に歩いている踏青が何とはなしに頭にきたので、後ろから殴る。
「いってぇな! 何するんだよ、いきなり!」
「叩きやすい位置にあったお前の頭が悪い」
しれっと言うと踏青がさらに何かわめきたてた。
こういう打てば響く反応が面白い。
踏青の反応を見ていたので、その時後ろでルシェイドが複雑な表情を浮かべていたことには気づかなかった。
「違う。彼が生きてても僕は別に困らないから」
恐る恐る踏青が聞くと、ルシェイドはあっさりと答えた。
「え、だって金髪って……!」
「そういやアタシも金髪でしたねぇ」
「僕が探しているのはサゼンディオスのほうだ」
「……誰?」
三人が同じ表情だったからだろう。
ルシェイドは明らか内困惑したようだ。
「ここにいるはずなんだ」
「あぁ、あいつじゃないのか」
「え、薄氷知ってんのか?」
たぶん本気で言っているであろう踏青に、精一杯嫌そうな顔をしてみた。
「お前ほんっとに馬鹿だな……」
「何だよッ!」
「知ってるのか? あいつが今どこにいるのか」
ルシェイドが勢い込んで聞く。
「たぶんな。……樹雨のことだろう」
「ヘ? ……あぁ! 浜に倒れてた奴か!」
「ようやくわかったのか……」
げんなりしながら踏青を見やる。
たまに本当の馬鹿なのかと疑いたくなるが
(いや馬鹿なんだろうけど)
それでもそれなりに頭がいい事を知っているのでなんともいえない。
「……樹雨?」
「見れば違うかそうなのかもわかるだろ」
さらりとかわして、とりあえず診療所に向かう。
酒星は用があるらしく、先ほどの家のほうに帰っていった。
診療所までの道では誰にも会わなかった。
そういえばもう昼かと思い、踏青のおかげで昼飯を食べていないことに気づく。
おまけに使いたくもない力を使ってしまった。
呪わしい。
力。
能天気に歩いている踏青が何とはなしに頭にきたので、後ろから殴る。
「いってぇな! 何するんだよ、いきなり!」
「叩きやすい位置にあったお前の頭が悪い」
しれっと言うと踏青がさらに何かわめきたてた。
こういう打てば響く反応が面白い。
踏青の反応を見ていたので、その時後ろでルシェイドが複雑な表情を浮かべていたことには気づかなかった。
音を立ててドアを開ける。
だんだん立て付けが悪くなってきている気もするが、とりあえず支障はない。
中には樹雨以外姿が見えなかった。
やはり昼飯かと思いつつ中に入る。
「よぅ、樹雨。調子はどうだ?」
「たまにお前のその能天気さが羨ましいよ」
半眼で言うが、聞こえなかったのか踏青は樹雨の方を向いている。
「……樹雨? お前が?」
聞こえた声は背後から。
振り返ると、きつく睨みつけているルシェイドがいた。
「やっぱ大当たりか?」
それには答えず、ルシェイドは大股に部屋に入ってくる。
樹雨が目を見開く。
「あなたは……!」
「……何故、こんなところにいるんだ」
押し殺したような声。
どんな感情で今喋っているのか。
それもよくわからないほど、たくさんの思いがある気がする。
樹雨は驚いていた表情を引き締めて、震える声で言った。
「彼に……会わせて下さい」
「……彼? 探し人の?」
呑気に踏青が口を挟む。
とりあえずそれを殴って黙らせて、二人の会話に耳をそばだてる。
「彼はいない」
「ではどこに……! どこにいるというのです!」
「探してどうするんだ」
「聞きたいことが……私は彼に聞かなければならないことがあるのです」
決意を秘めた声。
痛ましげな包帯がなんともいえない。
片目の代償をはらって、樹雨はたぶん、何も得ることはできないだろうに。
「無理だよ……彼は、もういない」
だんだん立て付けが悪くなってきている気もするが、とりあえず支障はない。
中には樹雨以外姿が見えなかった。
やはり昼飯かと思いつつ中に入る。
「よぅ、樹雨。調子はどうだ?」
「たまにお前のその能天気さが羨ましいよ」
半眼で言うが、聞こえなかったのか踏青は樹雨の方を向いている。
「……樹雨? お前が?」
聞こえた声は背後から。
振り返ると、きつく睨みつけているルシェイドがいた。
「やっぱ大当たりか?」
それには答えず、ルシェイドは大股に部屋に入ってくる。
樹雨が目を見開く。
「あなたは……!」
「……何故、こんなところにいるんだ」
押し殺したような声。
どんな感情で今喋っているのか。
それもよくわからないほど、たくさんの思いがある気がする。
樹雨は驚いていた表情を引き締めて、震える声で言った。
「彼に……会わせて下さい」
「……彼? 探し人の?」
呑気に踏青が口を挟む。
とりあえずそれを殴って黙らせて、二人の会話に耳をそばだてる。
「彼はいない」
「ではどこに……! どこにいるというのです!」
「探してどうするんだ」
「聞きたいことが……私は彼に聞かなければならないことがあるのです」
決意を秘めた声。
痛ましげな包帯がなんともいえない。
片目の代償をはらって、樹雨はたぶん、何も得ることはできないだろうに。
「無理だよ……彼は、もういない」
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管理者:西(逆凪)、または沖縞
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