小説用倉庫。
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波間に漂う影。
幻影。
それは過去の。
何とかしたかった。
それは結局。
どうにもならなかったけど。
それでも、あの時。
掴んだこの手があの人を救えたかもしれないのにと。
遅すぎる後悔を。
胸に秘めて。
幻影。
それは過去の。
何とかしたかった。
それは結局。
どうにもならなかったけど。
それでも、あの時。
掴んだこの手があの人を救えたかもしれないのにと。
遅すぎる後悔を。
胸に秘めて。
夢を見た。
大きな波が、小さな小さな船を飲み込むのだ。
酒星の乗っていた船が転覆したと聞いたのは、その夢を見た翌朝のことだった。
その船に乗っていたのは酒星を含めて5人。
そして酒星を除いた4人が、その日シンズィスの浜に打ち上げられたのだ。
船が出たのは1週間前。それで4人が無傷で、水もたいして呑まずに浜にいたことのほうが驚く。
「どういうことだよ。何であいつがいないんだ?」
皆無傷で今は大事を取って診療所にいる。
話を聞きに行って呆然とした。
「落ち着けよ、まだ死んだって決まってないだろ」
「俺はまだ何も言ってねぇ!」
すごく馬鹿にした口調で薄氷が言ってくるので、つい怒鳴ってしまう。
「違うのか?」
「……煩いッ!」
「落ち着きな、ふたりとも」
「そうだよッ!今捜索隊出そうって話でてんだから、大丈夫だって!」
声をかけてきたのは東旭と、その姉である冬杣だ。
血が繋がっていると聞いたことがあるが、性格はほとんど似ていない。
東旭が元気に肩を叩いてくるので、少しよろけてしまう。
「おまえ……もう少し体力つけたほうがいいんじゃないか?」
「余計なお世話だよ!」
薄氷はいつも一言多いと思う。
何度腹が立ったことか。
「そういやさ、昼ご飯まだ? 時間があるならちょっと出かけたいんだけど」
薄氷が冬杣に話し掛けている。
冬杣は切れ長の目を薄氷に向け、静かに口を開いた。
「もうそろそろできるはずだよ。……行ってみたらいい」
「そうする。お馬鹿な踏青はもう少しここにいるかい?」
「行くよッ! ていうか誰が馬鹿だ!」
「おまえ以外に誰がいるってんだよ」
ふたりの声が遠ざかっていくのを、その場にいるほぼすべての人が微笑みながら見守っていた。
大きな波が、小さな小さな船を飲み込むのだ。
酒星の乗っていた船が転覆したと聞いたのは、その夢を見た翌朝のことだった。
その船に乗っていたのは酒星を含めて5人。
そして酒星を除いた4人が、その日シンズィスの浜に打ち上げられたのだ。
船が出たのは1週間前。それで4人が無傷で、水もたいして呑まずに浜にいたことのほうが驚く。
「どういうことだよ。何であいつがいないんだ?」
皆無傷で今は大事を取って診療所にいる。
話を聞きに行って呆然とした。
「落ち着けよ、まだ死んだって決まってないだろ」
「俺はまだ何も言ってねぇ!」
すごく馬鹿にした口調で薄氷が言ってくるので、つい怒鳴ってしまう。
「違うのか?」
「……煩いッ!」
「落ち着きな、ふたりとも」
「そうだよッ!今捜索隊出そうって話でてんだから、大丈夫だって!」
声をかけてきたのは東旭と、その姉である冬杣だ。
血が繋がっていると聞いたことがあるが、性格はほとんど似ていない。
東旭が元気に肩を叩いてくるので、少しよろけてしまう。
「おまえ……もう少し体力つけたほうがいいんじゃないか?」
「余計なお世話だよ!」
薄氷はいつも一言多いと思う。
何度腹が立ったことか。
「そういやさ、昼ご飯まだ? 時間があるならちょっと出かけたいんだけど」
薄氷が冬杣に話し掛けている。
冬杣は切れ長の目を薄氷に向け、静かに口を開いた。
「もうそろそろできるはずだよ。……行ってみたらいい」
「そうする。お馬鹿な踏青はもう少しここにいるかい?」
「行くよッ! ていうか誰が馬鹿だ!」
「おまえ以外に誰がいるってんだよ」
ふたりの声が遠ざかっていくのを、その場にいるほぼすべての人が微笑みながら見守っていた。
「あ、おふたりサン、東旭がどこにいるか知りませんか?」
声をかけられてそちらを見ると、酒星が立っていた。
にこにこした顔。
いつもの。
「……」
止まってしまったこちらを見て、彼は少し戸惑ったようだ。
「どうか、したんですか?」
「……それはこっちのセリフだよ……」
「おまえ! 無事だったのか!?」
顔を伏せる薄氷の言葉にかぶせるように叫ぶと、酒星はきょとんとした顔をして言った。
「何がです?」
「だって船が転覆したって聞いて……」
「あー転覆しましたネェ」
「何で平気なんだよ!」
混乱してつい怒鳴る。
「落ち着けよ」
薄氷が勢いよく頭をはたいてくる。
あまりに勢いがついていたのでそのまま膝をついてしまったほどだ。
笑い声に顔を上げると酒星が笑っていた。
「相変わらずですね、ふたりとも」
「相変わらずって、まだ出かけて1週間しかたってねぇだろ!」
「……1週間?」
首を傾げて聞いてくる。
こうやって見ると暗殺を生業にしているようには見えない。
柔らかな金の髪が日に反射してきらめく。
「少なくとも3週間たってる予定なんですけどネ……」
「予定って……」
「暗殺失敗しちゃったんですヨ」
さらりと笑顔で言ってくる。
「……ロスウェルにまで行ってきたのか?」
「イーアリーサに流れ着きまして。そこから」
薄氷は腕を組んでうつむく。
「そうだな。どうやっても1週間じゃ無理だな」
「え、そうなのか?」
聞くと、ものすごく嫌そうな顔で薄氷が見てきた。
「普通にヴェリィサからいっても2週間以上はかかるんですヨ。帰りはヴェリィサから来ましたし」
冷笑でもって答えない薄氷にかわって、酒星が説明してくる。
声をかけられてそちらを見ると、酒星が立っていた。
にこにこした顔。
いつもの。
「……」
止まってしまったこちらを見て、彼は少し戸惑ったようだ。
「どうか、したんですか?」
「……それはこっちのセリフだよ……」
「おまえ! 無事だったのか!?」
顔を伏せる薄氷の言葉にかぶせるように叫ぶと、酒星はきょとんとした顔をして言った。
「何がです?」
「だって船が転覆したって聞いて……」
「あー転覆しましたネェ」
「何で平気なんだよ!」
混乱してつい怒鳴る。
「落ち着けよ」
薄氷が勢いよく頭をはたいてくる。
あまりに勢いがついていたのでそのまま膝をついてしまったほどだ。
笑い声に顔を上げると酒星が笑っていた。
「相変わらずですね、ふたりとも」
「相変わらずって、まだ出かけて1週間しかたってねぇだろ!」
「……1週間?」
首を傾げて聞いてくる。
こうやって見ると暗殺を生業にしているようには見えない。
柔らかな金の髪が日に反射してきらめく。
「少なくとも3週間たってる予定なんですけどネ……」
「予定って……」
「暗殺失敗しちゃったんですヨ」
さらりと笑顔で言ってくる。
「……ロスウェルにまで行ってきたのか?」
「イーアリーサに流れ着きまして。そこから」
薄氷は腕を組んでうつむく。
「そうだな。どうやっても1週間じゃ無理だな」
「え、そうなのか?」
聞くと、ものすごく嫌そうな顔で薄氷が見てきた。
「普通にヴェリィサからいっても2週間以上はかかるんですヨ。帰りはヴェリィサから来ましたし」
冷笑でもって答えない薄氷にかわって、酒星が説明してくる。
「酒星、東旭なら診療所にいたよ」
薄氷が横から口を挟む。
「そうですか。それじゃ、これはおふたりに」
言って酒星が渡してきたのは緑色の石。
薄氷が貰ったのは蒼い石のようだ。
「へぇ、綺麗だな、これ」
「ずいぶん力のある石みたいだけど、どうしたんだ?」
薄氷が怪訝そうな顔で酒星を見る。
「アタシももってんですがね。多分おふたり似あうかと思って」
ほら、と示したのは赤い石。
綺麗な。
「貰ったんですよ。綺麗でしょう」
そういうと、酒星はふたりに手を振りながら診療所の方に向かった。
「……なんかおまえ俺のこと目の敵にしてないか?」
「してるわけないだろ。……からかいやすいだけさ」
口の端だけあげて笑い、薄氷は先に進む。
目指しているのは食堂の方だ。
食堂に行くと食事はもう少し後だと断られた。
町の外に向かおうとする薄氷に声をかけると、肩越しに答えが返ってきた。
「散歩だよ。ついてくんな」
首を傾げつつ、薄氷に背を向けて自分の家のほうに向かう。
酒星のことで不安だったので、なんだか気が抜けてしまった。
港の方角から吹く風に煽られながらのんびり歩く。
「踏青ー! ちょっと来てー!」
声のする方角を見ると、小さな子供がいた。
海岸のある方だ。まだ遠いので良く見えない。
近くに行くと、それが誰だかわかった。
「何だよ、何かあったのか? 高西風」
彼は小さいながらも殺人者としてこの島に住んでいる者だ。
小さいといっても東旭たちとたいした差はない。
「僕ひとりじゃ持ち上がんないからさ、ちょっと来てって!」
「持ち上がんない? 何が」
首を傾げつつ、後についていく。
海岸に近づくにつれて、何かが倒れているのが目に入った。
最初はただのごみかと思った。
ごみにしては結構でかい。
次に目に入ったのが白っぽい色。
そして金色。
きらきらと日に反射している。
「……人?」
半ば呆然と呟く。
「何で人が、こんなとこに?」
薄氷が横から口を挟む。
「そうですか。それじゃ、これはおふたりに」
言って酒星が渡してきたのは緑色の石。
薄氷が貰ったのは蒼い石のようだ。
「へぇ、綺麗だな、これ」
「ずいぶん力のある石みたいだけど、どうしたんだ?」
薄氷が怪訝そうな顔で酒星を見る。
「アタシももってんですがね。多分おふたり似あうかと思って」
ほら、と示したのは赤い石。
綺麗な。
「貰ったんですよ。綺麗でしょう」
そういうと、酒星はふたりに手を振りながら診療所の方に向かった。
「……なんかおまえ俺のこと目の敵にしてないか?」
「してるわけないだろ。……からかいやすいだけさ」
口の端だけあげて笑い、薄氷は先に進む。
目指しているのは食堂の方だ。
食堂に行くと食事はもう少し後だと断られた。
町の外に向かおうとする薄氷に声をかけると、肩越しに答えが返ってきた。
「散歩だよ。ついてくんな」
首を傾げつつ、薄氷に背を向けて自分の家のほうに向かう。
酒星のことで不安だったので、なんだか気が抜けてしまった。
港の方角から吹く風に煽られながらのんびり歩く。
「踏青ー! ちょっと来てー!」
声のする方角を見ると、小さな子供がいた。
海岸のある方だ。まだ遠いので良く見えない。
近くに行くと、それが誰だかわかった。
「何だよ、何かあったのか? 高西風」
彼は小さいながらも殺人者としてこの島に住んでいる者だ。
小さいといっても東旭たちとたいした差はない。
「僕ひとりじゃ持ち上がんないからさ、ちょっと来てって!」
「持ち上がんない? 何が」
首を傾げつつ、後についていく。
海岸に近づくにつれて、何かが倒れているのが目に入った。
最初はただのごみかと思った。
ごみにしては結構でかい。
次に目に入ったのが白っぽい色。
そして金色。
きらきらと日に反射している。
「……人?」
半ば呆然と呟く。
「何で人が、こんなとこに?」
「ああ、これは駄目だね。残念だけど……」
冬杣はそう言って手にもっていた包帯をくるくるとしまう。
彼女は医者としての資格も有するので、大抵のけが人などは彼女に任せられる。
運ばれてきたのは、薄氷たちとそう年のかわらなそうな青年だ。
彼は頭部が血まみれの状態で発見された。
「そうなの?」
心配そうに東旭が聞く。
「まだ目が覚めてみないと断定はできないけど」
傷があったのは左眼より少し上の位置。
けれど傷は大きくて、失明している可能性が高いと冬杣が告げたのだ。
「大変ですねェ。どこから来たんでしょう」
酒星が腕を組んで首をひねる。
聞き取れないほどかすかな呼吸を続ける青年は、どの大陸にも見られない装飾をつけている。
白く長い上着の裾などに細かな金の刺繍が施してある。
布も上等のものだ。
「まぁ今日は様子を見よう」
そういう冬杣の言に従って、各々はその場から散っていった。
冬杣はそう言って手にもっていた包帯をくるくるとしまう。
彼女は医者としての資格も有するので、大抵のけが人などは彼女に任せられる。
運ばれてきたのは、薄氷たちとそう年のかわらなそうな青年だ。
彼は頭部が血まみれの状態で発見された。
「そうなの?」
心配そうに東旭が聞く。
「まだ目が覚めてみないと断定はできないけど」
傷があったのは左眼より少し上の位置。
けれど傷は大きくて、失明している可能性が高いと冬杣が告げたのだ。
「大変ですねェ。どこから来たんでしょう」
酒星が腕を組んで首をひねる。
聞き取れないほどかすかな呼吸を続ける青年は、どの大陸にも見られない装飾をつけている。
白く長い上着の裾などに細かな金の刺繍が施してある。
布も上等のものだ。
「まぁ今日は様子を見よう」
そういう冬杣の言に従って、各々はその場から散っていった。
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管理者:西(逆凪)、または沖縞
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