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2012/02/05 (Sun)
 アィルの家からレイザの家まで、約4半刻かかる。
 村にしてみたら大きいほうなのかと思って聞いてみると、ただ縦に長いだけだと言われた。
 レイザの家はアィルのそれに比べると小さく見えた。
 平屋で、けれど広そうだ。

「レイザ! いるか?」
 アィルが声をかけると、中から声が聞こえて昨日の青年が出てきた。
「ああ、ありがとうアィル……」
 ふとこちらを見たレイザの表情がこわばる。

 驚愕。
 畏怖。
 何に対して?

 レイザはアィルから薬を受け取ると礼を言ってそそくさと中に入っていってしまった。
 こちらのほうをちらちら見て
(警戒)
 いたので、ヴィオルウスはなんだか居心地が悪かった。
「何なんだ……?」
 アィルは憮然とした表情でもと来た道を帰り始める。
 後ろを振り返りながらも、ヴィオルウスが後に続く。
 その日も村人は少なかった。


「ところでさ、これ、なんだかわかるか?」

 家に着いたとき、アィルは奥の部屋から包みを持ってきて言った。
 先日レイザに渡されていたものだ。
 アィルが中から取り出したのは、ヴィオルウスの髪と同じような色をした石だった。
 薄い、銀とも青ともとれる色合い。
 磨きこまれたような輝きを放つそれは、どこか不自然に見えた。
「……これ……」
「こんなもの貰っても使えないし困っているんだが……」
 困り果てた表情でアィルがぼやく。
「……わたしが貰ってもいいかな」
「良いけど、おまえこれからどうするんだ?」
「エールに戻る」
 手渡された石を見つめながら、ヴィオルウスが答える。
 手のひらに収まるくらいのそれは、日の光を反射して鈍く光っていた。
「向うに置いたままの荷物があるんだ」
「へぇ。……じゃあさ、ついて行ってもいいか?」
 アィルがたずねると、ヴィオルウスは驚いた顔をして彼を見た。
「や、無理ならいいんだけど」
「別に無理じゃ……」
「エールで欲しいものがあるんだよ」
 不思議な顔でアィルが言う。
「それじゃあ、明日にでも……」
「そうだな。じゃあ今日は早く寝よう」

 アィルは石の入っていた袋を丸めると、くずかごに放り込んだ。
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