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2012/02/05 (Sun)
 アィルと別れたヴィオルウスは、宿屋を出てから町のはずれの方に向かっていた。

 路地裏の。
 暗い道を。
 怖れと、決意を秘めた顔で進んでいく。
 町の通りの方はあんなに人がいたのに、ここは人影すら見えない。
 無人かと思えるほど。

 たどり着いたのは、ともすれば見落としがちな、古ぼけた扉の前だ。
 ヴィオルウスが扉を叩こうと手を上げ、振り下ろそうとしたところで扉が開く。
 音も無く。
 開いた扉の付近を見回すが誰も見えず、部屋の中も暗い。
 少しためらったあと、おそるおそる中に足を踏み入れる。
 来たのは二度目だったが、そのときとはまた違ってきているようだ。

 二歩目を踏み出した時、大きな音を立てて扉が閉まった。
 慌てて扉に手をかけるが、閉まった扉はびくともしない。
 混乱した頭で扉を叩く。
 と、不意に何かの気配を感じて動きを止める。

 何か。
 それとも、誰かか。

 振り向くが、そこは完全な闇と化していて何も見えない。
 まるで無限の空間のようなそれ。

 不意に体が震え、鳥肌が立つ。
 何もいない。
 見えない。
 何も。
(こわい)
 こわいなんて事は無いはずなのに。
 ただの部屋の中のはずなのに。
 何故。
 こんなにも。

 怯える、なんてことが。


「……何をしに来た」

 聞こえてきた低い声に息を呑む。

「答えろ」
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