小説用倉庫。
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怪我をしたときの薬や獣が寄ってこない匂い袋などを作りながら、アィルは上を見上げた。
(昨日)
何の物音もしない。
「大丈夫かなぁ」
手早く終わらせると、それぞれの場所に戻しておく。
いつものようにすべての道具を確認すると、アィルは部屋を出て鍵をかけた。
時には劇薬となるものも含まれているため、中に誰もいないときは鍵をかけるようにしているのだ。
2階にあがり、気になったのでヴィオルウスの部屋を覗いてみる。
ヴィオルウスはきちんとベッドで、掛け布をかけて寝ていた。
平気かなと近くに行くと、いきなり寝返りを打ったので驚いてその場に立ち尽くす。
「……ッ……」
どうやらうなされているらしい。
胸元をきつく握り締め、苦痛の表情を浮かべている。
「ヴィオルウス?」
呼びかけてみるが答えはなく、起きる気配も無い。
「邪魔を、しないでくれるかい?」
突然聞こえた声に、アィルはまわりを見回す。
手は自然と佩いた剣の柄に行く。
声を出したであろう人物は窓枠に腰掛けていた。
片膝を立てて頬杖をついている。
「……これでも穏便なやり方でやっているんでね。邪魔をされると長引いてしまう」
ため息とともに出された言葉。
けれどそれより印象的なのは金の光。
それがその人物の目だと気づいたのは視線を外されたときだった。
その人物はアィルからヴィオルウスに視線を移すと目を細めた。
「君、昨日も邪魔したね?」
「……何の話だ。それに、誰だよ」
何とか声を出すが、それは聞き取りにくいほどかすれてしまっていた。
「この子なら僕の事を知っているはずだ。でも今は無理だろうけどね」
ほらと言ってヴィオルウスを指差すと、苦しいのか声をあげる。
「……ぅあ……ッ!」
「……ヴィオルウス……!」
起こそうと近寄る。
しかし手を伸ばしたところで、動けなくなった。
指一本動かせない。
「だから邪魔をするなと、言ってるんだよ」
心持ち険しい眼差しでこちらを見てくる彼と、苦しそうなヴィオルウスを見比べて、アィルは窓の方を向いて睨んだ。
「おまえがやってんのか。苦しがっているじゃないか!」
「見せているのは僕だけど、それは自業自得なんだよ。この子が、弱いからこうなっているだけのことさ」
「何を……!」
「ああ、もう起こしてもいいよ。このくらいにしておかないとまだ駄目みたいだから。……じゃあね。アィル」
そう言って止める間もなく窓から飛び降りてしまう。
慌ててアィルは窓から下を見るが、誰の姿も無い。
そこでまた体を動かすことができることに気づく。
狐につままれたような顔をしてヴィオルウスを見ると、もう苦しそうではなく、穏やかな寝息を立てている。
「なんだってんだよ……」
アィルは髪の毛をぐしゃぐしゃにかき混ぜ、ヴィオルウスを一瞥してから部屋を出た。
(昨日)
何の物音もしない。
「大丈夫かなぁ」
手早く終わらせると、それぞれの場所に戻しておく。
いつものようにすべての道具を確認すると、アィルは部屋を出て鍵をかけた。
時には劇薬となるものも含まれているため、中に誰もいないときは鍵をかけるようにしているのだ。
2階にあがり、気になったのでヴィオルウスの部屋を覗いてみる。
ヴィオルウスはきちんとベッドで、掛け布をかけて寝ていた。
平気かなと近くに行くと、いきなり寝返りを打ったので驚いてその場に立ち尽くす。
「……ッ……」
どうやらうなされているらしい。
胸元をきつく握り締め、苦痛の表情を浮かべている。
「ヴィオルウス?」
呼びかけてみるが答えはなく、起きる気配も無い。
「邪魔を、しないでくれるかい?」
突然聞こえた声に、アィルはまわりを見回す。
手は自然と佩いた剣の柄に行く。
声を出したであろう人物は窓枠に腰掛けていた。
片膝を立てて頬杖をついている。
「……これでも穏便なやり方でやっているんでね。邪魔をされると長引いてしまう」
ため息とともに出された言葉。
けれどそれより印象的なのは金の光。
それがその人物の目だと気づいたのは視線を外されたときだった。
その人物はアィルからヴィオルウスに視線を移すと目を細めた。
「君、昨日も邪魔したね?」
「……何の話だ。それに、誰だよ」
何とか声を出すが、それは聞き取りにくいほどかすれてしまっていた。
「この子なら僕の事を知っているはずだ。でも今は無理だろうけどね」
ほらと言ってヴィオルウスを指差すと、苦しいのか声をあげる。
「……ぅあ……ッ!」
「……ヴィオルウス……!」
起こそうと近寄る。
しかし手を伸ばしたところで、動けなくなった。
指一本動かせない。
「だから邪魔をするなと、言ってるんだよ」
心持ち険しい眼差しでこちらを見てくる彼と、苦しそうなヴィオルウスを見比べて、アィルは窓の方を向いて睨んだ。
「おまえがやってんのか。苦しがっているじゃないか!」
「見せているのは僕だけど、それは自業自得なんだよ。この子が、弱いからこうなっているだけのことさ」
「何を……!」
「ああ、もう起こしてもいいよ。このくらいにしておかないとまだ駄目みたいだから。……じゃあね。アィル」
そう言って止める間もなく窓から飛び降りてしまう。
慌ててアィルは窓から下を見るが、誰の姿も無い。
そこでまた体を動かすことができることに気づく。
狐につままれたような顔をしてヴィオルウスを見ると、もう苦しそうではなく、穏やかな寝息を立てている。
「なんだってんだよ……」
アィルは髪の毛をぐしゃぐしゃにかき混ぜ、ヴィオルウスを一瞥してから部屋を出た。
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