忍者ブログ
小説用倉庫。
HOME 65  66  67  68  69  70  71  72  73  74  75 
2024/11/25 (Mon)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2012/02/05 (Sun)
 怪我をしたときの薬や獣が寄ってこない匂い袋などを作りながら、アィルは上を見上げた。
(昨日)
 何の物音もしない。
「大丈夫かなぁ」
 手早く終わらせると、それぞれの場所に戻しておく。
 いつものようにすべての道具を確認すると、アィルは部屋を出て鍵をかけた。
 時には劇薬となるものも含まれているため、中に誰もいないときは鍵をかけるようにしているのだ。

 2階にあがり、気になったのでヴィオルウスの部屋を覗いてみる。
 ヴィオルウスはきちんとベッドで、掛け布をかけて寝ていた。
 平気かなと近くに行くと、いきなり寝返りを打ったので驚いてその場に立ち尽くす。
「……ッ……」
 どうやらうなされているらしい。
 胸元をきつく握り締め、苦痛の表情を浮かべている。
「ヴィオルウス?」
 呼びかけてみるが答えはなく、起きる気配も無い。


「邪魔を、しないでくれるかい?」


 突然聞こえた声に、アィルはまわりを見回す。
 手は自然と佩いた剣の柄に行く。
 声を出したであろう人物は窓枠に腰掛けていた。
 片膝を立てて頬杖をついている。
「……これでも穏便なやり方でやっているんでね。邪魔をされると長引いてしまう」
 ため息とともに出された言葉。
 けれどそれより印象的なのは金の光。
 それがその人物の目だと気づいたのは視線を外されたときだった。

 その人物はアィルからヴィオルウスに視線を移すと目を細めた。
「君、昨日も邪魔したね?」
「……何の話だ。それに、誰だよ」
 何とか声を出すが、それは聞き取りにくいほどかすれてしまっていた。
「この子なら僕の事を知っているはずだ。でも今は無理だろうけどね」
 ほらと言ってヴィオルウスを指差すと、苦しいのか声をあげる。
「……ぅあ……ッ!」
「……ヴィオルウス……!」

 起こそうと近寄る。
 しかし手を伸ばしたところで、動けなくなった。
 指一本動かせない。
「だから邪魔をするなと、言ってるんだよ」
 心持ち険しい眼差しでこちらを見てくる彼と、苦しそうなヴィオルウスを見比べて、アィルは窓の方を向いて睨んだ。
「おまえがやってんのか。苦しがっているじゃないか!」
「見せているのは僕だけど、それは自業自得なんだよ。この子が、弱いからこうなっているだけのことさ」
「何を……!」
「ああ、もう起こしてもいいよ。このくらいにしておかないとまだ駄目みたいだから。……じゃあね。アィル」
 そう言って止める間もなく窓から飛び降りてしまう。
 慌ててアィルは窓から下を見るが、誰の姿も無い。
 そこでまた体を動かすことができることに気づく。
 狐につままれたような顔をしてヴィオルウスを見ると、もう苦しそうではなく、穏やかな寝息を立てている。

「なんだってんだよ……」

 アィルは髪の毛をぐしゃぐしゃにかき混ぜ、ヴィオルウスを一瞥してから部屋を出た。
Comment
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Password
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
HOME 65  66  67  68  69  70  71  72  73  74  75 
HOME
Copyright(C)2001-2012 Nishi.All right reserved.
倉庫
管理者:西(逆凪)、または沖縞

文章の無断転載及び複製は禁止。
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
[長編] Reparationem damni  (03/12)
[長編] Reparationem damni  (03/12)
[長編] Reparationem damni  (10/19)
[長編] Reparationem damni  (10/19)
[長編] Reparationem damni  (09/07)
忍者ブログ [PR]
PR