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2024/11/24 (Sun)
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2012/02/05 (Sun)
「見たとおりだよ」

 響いた声はヴィオルウスの声ではなかった。
「おまえ……」
 その姿が現われたとたん、立ち竦んでいたヴィオルウスは弾かれたように背を向けて駆け出した。

 逃げるように。

 すぐに見えなくなってしまう。
「嫌われたかな」
「……なんで、おまえが……?」
 訝しげな声に、突然現われた人影、ルシェイドは首をかしげる。
「何故僕がここにいるのがおかしいと思うの?」
「え……」
 困惑したようにアィルが呟く。

 ルシェイドは不意に視線を下げた。
 視線を追うと、ヴィオルウスが蹲っている暗がりに目が行った。
 ぼんやりと、けれど徐々に輪郭がぼやけていく。
 そうと気づいたときに、手を伸ばす間もなく瞬く間にそれは消滅した。
「……消えた……?」
「うん。逃げられたようだね」
 たいしたことではないように頷くルシェイドを、アィルは問い詰める。
「何でそんな落ち着いてるんだよ。あいつがどこに行ったのか知ってるのか!?」
「……そうだね。知ってる。でも教えないよ」
「何で!」

「教えたら、君は探すことを放棄してしまうもの」

 当然とばかりに答えて、ルシェイドは背を向けた。
「どこに行く!」
「どこって……探すんでしょう?」
 眉をひそめてアィルを振り返る。
 肩透かしを食らったような顔をして、アィルが口を開く。

「おまえ……誰だ?」

 ルシェイドはその言葉に笑みを深くする。
「僕はルシェイドだよ。君が知っているか知らないけど」

「俺はおまえを知ってる。けど、何か違う気がする」
 正直に感じたまま答えると、ルシェイドは声を出して笑った。
「まぁ、それはそのうち教えてくれるだろう。……早く行かないと、追いつけなくなるよ? 君の、思うとおりに進んでごらん」

 すっと、進路を明け渡すように身を引く。

 しばらくの逡巡の後、アィルは一歩踏み出した。
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