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2012/02/05 (Sun)
 どのくらい歩いたのか。
 もうすでに聞こえる声もなく、風も動かない。
 変わらずどんよりと曇った空を、見上げながら歩いていたら何かに躓いた。
 不意のことだったのでとっさに対応できず、転んでしまう。
「……いてぇ。何だ?」
 手についた何かを払う。べとりとしたそれはなかなか離れなかった。

 怪訝に思ってよく見ると、それは髪だった。
 血糊もついている。
「何だ、ここ……ッ!」

 あたりは一面血の海だった。
 所々にもはや原形もとどめぬ肉の塊が転がっている。
 あまりの惨状に思わず口を覆う。


 ――――――ザッ!


「……ッ!!」
 突然目の前に落ちてきたそれは、アィルの胸に短剣を突き刺した。
 ごぼりと、血が口元から溢れ出す。

 鉄の味。
 痛みをこらえ、それを見る。
 紫の瞳を怒りに染めて、それは叫んだ。
「――失せろ! わたしの中に入ってくるなッ!!」

「ヴィ……!」

 声に押された感じだった。
 意識が拡散する。
 押し流される感触。

(どこに――……)
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