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2012/02/05 (Sun)
 城に向かって進むにつれて、アィルは今いる場所がさっきまでと違うことを認識せざるを得なくなった。
「何かいる……」
 警戒して言うと、呆れたように肩をすくめてルシェイドが答える。
「当たり前だよ。ここだって生き物住んでるんだからね」
 さっきまでいたところは生き物の気配などなかった。
 飛んでいた鳥でさえ、動かなければわからなかったほどに。

 あとは――。

 思い出したものに思わず口元を覆うと、怪訝そうにディリクが口を開く。
「どうかしたか?」
「……何でもない」
「無理はするな」
 わかっていると口を開きかけ、不意に城の方を仰ぎ見る。

 暗くなってきている。
 それも城の一部分だけが。
 見ていると、雷が落ちた。
 地を揺るがすほどの轟音。
「急ごう。手遅れになる前に」
 ルシェイドが厳しい顔つきで走り出す。
 つられて走る。
 城の方へ。


 城の入り口まで来ると、誰かが座っているのが見えた。
 獣の耳が生えている。
 青年のようだ。
 負傷しているのか、衣類の所々が裂け、赤いものが滲んでいる。
 彼はこちらに気づくと、右肩を抑えながら立ち上がった。
「ルシェイド、急いでくれ。グラディウスが中にいるんだ」
 かすれた声。
「……わかった。アレン、他の者は?」
「いない。退避、させてある」
「少し休め。酷い怪我だ」
 ディリクが心配そうに言うと、アレンは唇の端をあげて笑った。
「……平気だ。オレは、丈夫だからさ」
 ふと、笑顔を消すと、厳しい顔で城の方にあごをしゃくる。
「行ってくれ。止められるのは、多分おまえたちだけだろ。……頼んだよ」
 ルシェイドはアレンに手を貸し、彼が座っていたところにもう一度座らせる。
「すぐ戻るから」
 そう言って手を翳す。
 淡い光。
 癒しの。

 アレンは目を閉じた。
 どうやら眠りに落ちたらしい。
「ルシェイド」
「……平気だよ」
 苦笑して、アレンから目を逸らす。
「行こう……」
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