小説用倉庫。
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「アィル」
ルシェイドの声に後ろを振り向こうとすると、いきなり襟足をわしづかみにされて引き倒された。
文句を言おうと思ったが、一瞬前までいたところに上から何かが落ちてきてそれは中断された。
「ヴィオルウス!」
起き上がって近寄ろうとすると、上から落ちてきたヴィオルウスは舌打ちをしてすぐに身を翻した。
「あ、おい、待てよ!」
「アィル、ちょっと待って」
何を言うのかと振り向くと、その足元に短剣が突き刺さった。
「……なんだって俺が攻撃されなきゃならないんだ……?」
「侵入者は誰だって排除されてしかるべきでしょう」
さらりと言ってくるルシェイドを睨みながら、アィルはまた歩を進めた。
その後何度も同じような目に遭いながら、けれど捕まえることはできずにかなりの時間が経った。
「なぁ、何であいつは逃げたんだ?」
歩くのにも飽きてきた頃、アィルがルシェイドに問い掛けた。
「自分が殺されないために。……僕がいるということもよくわかっているらしいからね」
静かに答え、空を仰ぐ。
怪訝に思って問い掛ける。
剣呑な視線で。
「あいつを、殺すつもりか?」
冷やりとした沈黙。
ルシェイドは目を伏せ、一瞬ためらった。
「……そうだね……。やむを得なければ、ね」
どういうことだと口を開きかけたところで、鳥が一斉に飛び立った。
思わず目をやると、ぽつんと何かが見えた。
鋭く尖った屋根。
「あれは……?」
そちらに目をやったルシェイドが答える。
「あそこに、城がある」
ゆっくりと。
「魔界の、城が」
ふと視線を落すと、少し先に銀青色の髪が揺れた。
走り出そうとして、ルシェイドの姿が見えなくなっていることに気づく。
まわりを見渡してもいない。
アィルは小さく舌打ちすると、ヴィオルウスの方に向かって走った。
手を伸ばす。
ヴィオルウスに向かって。
(手が)
ゆらりとした動きで
(触れたと)
こちらを振り返ったヴィオルウスは
(思った)
まったくの無表情で
(のに)
アィルをまっすぐに見つめた。
とたんに視界が反転する。
立ち眩みのような、それ。
背中への衝撃に思わず目を瞑る。
次に目を開いてみたのは、先ほどと変わらぬ灰色の空。
けれど
(ヴィオルウス)
まわりに誰もいなかった。
唯のひとりも。
「……ヴィオルウス……?」
声に出してみる。
誰も、答えない。
ルシェイドの声に後ろを振り向こうとすると、いきなり襟足をわしづかみにされて引き倒された。
文句を言おうと思ったが、一瞬前までいたところに上から何かが落ちてきてそれは中断された。
「ヴィオルウス!」
起き上がって近寄ろうとすると、上から落ちてきたヴィオルウスは舌打ちをしてすぐに身を翻した。
「あ、おい、待てよ!」
「アィル、ちょっと待って」
何を言うのかと振り向くと、その足元に短剣が突き刺さった。
「……なんだって俺が攻撃されなきゃならないんだ……?」
「侵入者は誰だって排除されてしかるべきでしょう」
さらりと言ってくるルシェイドを睨みながら、アィルはまた歩を進めた。
その後何度も同じような目に遭いながら、けれど捕まえることはできずにかなりの時間が経った。
「なぁ、何であいつは逃げたんだ?」
歩くのにも飽きてきた頃、アィルがルシェイドに問い掛けた。
「自分が殺されないために。……僕がいるということもよくわかっているらしいからね」
静かに答え、空を仰ぐ。
怪訝に思って問い掛ける。
剣呑な視線で。
「あいつを、殺すつもりか?」
冷やりとした沈黙。
ルシェイドは目を伏せ、一瞬ためらった。
「……そうだね……。やむを得なければ、ね」
どういうことだと口を開きかけたところで、鳥が一斉に飛び立った。
思わず目をやると、ぽつんと何かが見えた。
鋭く尖った屋根。
「あれは……?」
そちらに目をやったルシェイドが答える。
「あそこに、城がある」
ゆっくりと。
「魔界の、城が」
ふと視線を落すと、少し先に銀青色の髪が揺れた。
走り出そうとして、ルシェイドの姿が見えなくなっていることに気づく。
まわりを見渡してもいない。
アィルは小さく舌打ちすると、ヴィオルウスの方に向かって走った。
手を伸ばす。
ヴィオルウスに向かって。
(手が)
ゆらりとした動きで
(触れたと)
こちらを振り返ったヴィオルウスは
(思った)
まったくの無表情で
(のに)
アィルをまっすぐに見つめた。
とたんに視界が反転する。
立ち眩みのような、それ。
背中への衝撃に思わず目を瞑る。
次に目を開いてみたのは、先ほどと変わらぬ灰色の空。
けれど
(ヴィオルウス)
まわりに誰もいなかった。
唯のひとりも。
「……ヴィオルウス……?」
声に出してみる。
誰も、答えない。
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