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2012/02/05 (Sun)
 石が割れる。

 それがどういう意味を持つのか。
 この時点ですべてわかっている人物はほとんどいなかった。

 カタン、と音がして、薄暗い建物の影からひとつの人影が現われた。
 ウェーブの髪を背に流し、ふらりと歩いている。

 そこは中央の大地。
 国主アンスリウムが治める国、メディウム・トゥッリスの塔の中。

 幾枚もの薄布が天井から垂れ下がる場所を、彼女は迷うことなく歩く。

 国主の付き人である彼女にとって、この塔の中は庭のようなものだ。
 ほんのかすかな衣擦れの音しかしない空間の中で、つと、彼女は足を止めた。

 目の前には大きな扉。
 身長の4倍はあろうかというそれは、彼女が軽く触れるだけで開いた。

「……アザミか」

 奥から聞こえる深い声に、彼女、アザミは部屋の中に入った。
 背後で扉が閉まる。
「思うように運びませんわ。……アンスリウム様」
「良いよ。期待はしていなかった」
 アンスリウムは大して面白くもなさそうに笑った。
 暗く、低い、笑い声。
「どのみち、落ちるのは時間の問題だ……」





 その時突然地震があった。

 家具が倒れ、お茶の入ったカップが床に落ちる。
 サキはレイラを庇い机の下に隠れ、その地震をやり過ごした。
 時間的には10分もなかっただろう。けれどその地震のせいで、かなりの被害が出たことはたしかだった。
 そのことを思い、ため息をついて机から出る。

「怪我は、ないか?」
「大丈夫です……。大きかったですね」

「ああ、何か、いやな予感がする」
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