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2012/02/05 (Sun)
 地震よりも少し前、炎の国メリーディエース。

 国主ユゥアは、付き人アールドルと共に街に下りていた。

「相変わらずにぎやかだね!」
「まあ、国主があんただからね」
「言うじゃないか」
「言わないとわかんないでしょうが」
 言い争いのような感じで、けれど親しみのこもった口調で話すふたりに、街の皆が挨拶をしていく。

「やぁ。あとで、持っていくかい?」

 店においてある果物を手に、初老の人が話し掛ける。
 気のいい果物屋だ。

「ああ、じゃあ帰りに寄らせてもらうよ!」
 元気に答えて、ユゥアは片手を挙げる。

「安請け負いしないでよ……それで荷物重くなったらどうすんの」
「あたしは自分に正直に生きてんだ!」
「や、それはわかってるんだけど」
「じゃあ諦めなって」
 明るく笑ったユゥアに、アールドルは疲れたように笑った。




 柱が崩れた。

 何の前触れもなかった。
 逃げる暇さえも。

 地面が揺れた。
 体が一瞬浮くほどに強く。
 その後すぐに地面が裂けた。

 崩れる大地。人や建物はまるでゴミか何かのように簡単に落ちていった。
 人々の悲鳴は長く、けれどそれ以上に建物や大地の裂ける音でかき消されていった。

 崩壊はそんなに長い時間、かからなかった。
 ほとんど時間をかけずに、すべては青く光る海に飲み込まれた。


 長く存在していた拮抗が、崩れ始めていた。
 この時点から、南の大地は永遠に消えうせた。
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