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2012/02/05 (Sun)
「赤い石が落ちた」

「予定通り、ですか?」
「いや……。どうかな……」




「誰ぞ、おらんのか」

 聞こえてきた高い声に、サキは顔を上げた。
「私が行ってきます」
 駆け足でレイラが部屋から出て行く。
 それを見送ってから、倒れた家具をもとにもどすため床に落ちた本の束を拾い始める。
 棚を見て、ひとりでは到底無理そうなことに気づく。
 どうしようと考えていると、戸口から声が聞こえた。

「うわ、何だこれ」
「……ラクス?」
 サキは部屋に入ってきた人物を不思議そうに見つめ返す。
 落ちた本を踏まないように注意深くサキの傍まで来ると、片眉をあげて問い掛ける。
「酷いありさまじゃねぇか。強盗でも入ったのか?」
「入ってないよ……地震があっただけだから」
「さっきのやつか? そんなに酷かったかな」
 首を傾げながら、ラクスは床に落ちている本を拾う。

「ところで、どうかしたのか?」
「俺は何があんのか知らねぇ。詳しくはあいつに聞いてくれ」
「あいつ?」
 問い返したときにちょうどレイラが戻ってきた。
 傍らにひとりの少女を連れている。
 水の国主だ。
 身長はレイラの胸のあたりまでしかない。
 手を引かれなければ歩けない。

 盲目の国主、ヒウリ。

 彼女はこちらに顔を向けると、皮肉げに口元を歪める。
「何じゃ、せっかく会ったのに、挨拶もなしかぇ?」
「いや、……久しぶりだったから」
「挨拶なんかどうだっていいじゃねぇか。用件あんだろ?」
「ほんに口が悪いの。ここはセプテントゥリオーではない。少しは慎んだらどうじゃ」
「どうでもいいって言ってんじゃねぇか……」
「ほほ。それで、用件というのはの、メリーディエースのことなんじゃが……」
 ぼやくラクスを無視して、ヒウリはサキに向き直る。

「どうか、したのか?」

「ふむ……? おんしは知らんかったのかぇ? 彼の国は落ちた」

 一瞬、時間が止まったように感じた。
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