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2012/02/05 (Sun)
「どうすればよいのか、私も少し考えてみよう.……答えは、出ないやも知れんがの」
 そう言い残して、ヒウリは自国に帰っていった。

 サキは自室の椅子に坐ったまま、じっと考えていた。
「今日はお客様が多かったですね」
 静かに入ってきたレイラが、淹れなおしたお茶をサキの前に置く。
「そう、だね……」
 深く考えに沈むサキに、ためらいがちに声をかける。
「……あの」
 言いにくそうに顔を伏せるレイラに視線を向けた。

「何だ?」
「その……石は、今、どこに……?」
「宝玉のことか? あれなら、奥の部屋に置いたままだが」

 奥の部屋は、この建物が建ったときから大切なものの保管場所として存在していた。
 たいしたものは入っていないが、それなりに役に立つ。
 結構しっかりした部屋なので、サキはそこに宝玉を置いていた。
 鍵はもちろんサキが持つ。

「それが、どうかしたのか?」
「い、いえ! なんでもないです」
「そうか?」
 大慌てで両手を振るレイラに、サキは首を傾げる。
 彼女はそんな視線を避けるように一礼して出て行った。



 その夜、サキは寝付けずに外に出ていた。
 明るく光る月がふたつある。
 手のひら位の大きさのと、それより一回り大きな月と。
 大昔はひとつだったらしいそれが、いつからふたつになったかなど知らない。

 頬にあたる風を感じて、ゆっくりと周りを見る。
 町にちらほら灯りがあるだけで、昼間の喧騒は影も形もない。
 静かな景色。

「どうしたら……」
 この空間を。
 言いかけて口をつぐむ。
 言葉に出しても意味のないこと。
 サキは首を横に振って、部屋に戻った。

 彼がいなくなって少し。
 建物の陰になっているあたりで、じっとサキがいた場所を見ているレイラがいた。
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