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2012/02/05 (Sun)
 ぐらりと、足元が揺れたように感じた。

「サキ様!」
 レイラがすばやく支える。

 震える唇で、サキが問う。
「それは、どういう……」
「そのままじゃ。そうじゃの。さっきの地震……。崩れたのは、あれの所為じゃな」
「そんな……!」
「意外じゃったかの?」
 見えぬ目を正確にサキに向け、ヒウリが言う。

「意外だろうよ。いきなりそんなこと言われちゃあな」
「ふむ。では何と言えばよかった?」
「だからもう少しソフトに……」
「それはどういうと、聞いておるのじゃ」
 口ごもってしまったラクスにため息をつく。
 その目が閉じられたままなのに、こちらを強く射抜く視線を感じる。

 居心地の悪さを感じつつも、告げられたことのほうが衝撃が大きい。
「サキ。どう感じようと、これは事実じゃ。起こってしもうたことはどうしようもない」
「……ユゥアは……」
「アールドルたち民と共に落ちたようじゃな」
「そんな……ことが……」

 信じられなかった。
 ミカゲにも、言われたばかりだったけれど。

 占者の予言。
 赤い石が、割れると。

 それが、こんな意味を持つなんて。

「信じようと信じまいと、すでにそれは起こっておる。しっかりせい」

『この世界は滅びる』

「この世界が、滅びるのか……?」
「何じゃと?」
 ふと思い出した言葉を、口の端に乗せる。
「世界が、滅びると、言われたんだ」

 少年の。
 言葉が頭を回る。

「おんしは何のことを言うておるのじゃ?」
 ヒウリが怪訝そうに眉をひそめる。
 じっと彼女を見たまま、サキは言葉をつむぐ。
「人間たちのせいで、滅びると……」

 愚かなとは言わなかった。
 言えなかった。
 愚かしくも、それが人間だとは思うから。
 思ってしまうから。

 ヒウリはため息をついて、肩をすくめた。
「そうじゃな。形あるものはいつかなくなる。それと同じ理屈じゃろうな」
「そんなのんきに言える事なのかよ!」
「仕方なかろう。言うても詮無きことじゃ」
「宝玉は柱と共に。そうも言っていた。どういう意味だろう?」
 どこか不安定な眼差しで、サキが問いかける。
「それを破った故に、彼の国が滅びたというのかぇ? ……そんなことを言うたら、他の国も遠からず滅びるの」
 その時レイラが良い香りのお茶を持って現われた。
 少し前に姿が見えなくなっていたが、どうやらお茶を入れてきたらしい。
「お話はこちらの部屋でなさいませんか? そこは酷いので」
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