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2012/02/05 (Sun)
 サキの私室である部屋にミカゲを通してしばらく。
 廊下を足音が近づいてくるのに気づいて、ふたりは扉を見やった。
 急いでいるような、そんな足音。

「ミカゲ様!」
「シルウァ」
 扉を開けて入ってきた少年に、ミカゲが微笑む。

 シルウァはミカゲの付き人だ。
 まだ少年だが、よく働くとの評判の。
 少し気弱そうな瞳をミカゲに向け、それからサキに向ける。

「こんにちは、サキ様」
 礼儀正しく言うシルウァに、サキも挨拶を返す。

「あの……」
「ああ、かまいません。今渡してくださいますか?」
 シルウァの態度に微笑み、ミカゲが促す。
 彼がすっと差し出したのは、苗だった。
 オッカースゥスでよく育つ、木の苗。
「ミカゲ、それは?」
「これですか? ……いい木があれば買ってくるように、頼んだんです。国で育つかどうかは疑問なんですが」
 苦笑して、苗を受取る。
 ゆっくりとそれを見てから、シルウァを見上げ、微笑む。

「ああ、いいですね。ご苦労様です。シルウァ」
 その言葉に、シルウァが相好を崩す。
 花がほころぶような、笑顔。
「皆さん、お茶、いかがですか?」

 その時ちょうどレイラが戻ってきた。

 どうやら苗を買いに来ただけのようで、ミカゲ達はしばらくして帰ってしまった。
 帰り際に、不吉なことを言い残して。

 彼は神妙な顔で、まっすぐサキを見て言った。
「……占者が言っていました。近いうちに、赤い石が割れると」
 サキはその言葉を聞いて、半ば呆然とミカゲの顔を見た。
「よくは、わからなかったんですが」
 そう言って笑った彼に、サキは何か腑に落ちないものを感じた。

 何かがあるような。
 違和感が。
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