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2012/02/05 (Sun)
「次に崩れるとしたら、オリエーンスじゃろうな」
 お茶を飲みながら、ヒウリが不意に呟く。
「何でわかるんだよ」
「占者の力、と言うておこうかの」
「はぐらかすか」
 ラクスの言うことに笑って答え、サキに顔を向ける。
「それを、回避することは」
「無理じゃな」
 きっぱりと。
 反論を口にする余地もないほどに。

「あの国もそろそろ駄目じゃろう」
 相次ぐ災難に、国の民は疲弊しきっていると。
 それに耐えられるだけの。
 力が、もう。
「何とか、ならないのか……!」
「まずおんしは自分の国のことをどうにかすることじゃな。今のところこの国が最も災厄からは遠い。じゃが、それに自惚れんことじゃ」

「どういう……」
 ヒウリはふと息をついて、額に手を当てた。
「わからんか? この気候が。頬にあたる風が。……こんなにも澄んでおるのはもうここだけじゃろう」
「うちらの国でさえもう風が吹かないからな」
「風が、吹かないだって?」
 驚いた声をあげるサキに、水の国のふたりが頷く。
「水さえもだんだん濁ってきやがった。……水の国とまで言われた国の水が……!!」
 憎々しげに吐き捨てるラクスに顔を向け、ヒウリが口を開く。
「すでに世界を支えることができなくなっておるのじゃ。どの大地もそうじゃろう。ただ、中央はどうだかわからんがな」
 神がいるという。
 中央の。

 言葉に含まれた感情に気づかず、サキが歯を食いしばる。
「どうにも、ならないのか!? もう手遅れだなんて……!」
「生き残る、術はあるのやも知れぬ。じゃが、それがわからん」
「せめて、街のみんなだけでも……」
「住む大地がなくてどうやって生き残るつもりじゃ」
 ヒウリの言葉に息を飲む。

 そのことも、考えないではなかった。
 けれど、どうしたらいいのか。

 サキにはまだわからない。
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