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2012/02/05 (Sun)
 真剣な眼差し。
 それに気圧されたかのように影がひるむのがわかる。
 視線を外さずに、サキが問う。

「この間、言っただろう。世界が、……滅びると」
「ああ、そんなことも言ったか」

 なんでもないことのように言い放って、影は立ち上がった。
 その態度にサキがかっとなる。
「そんなことってなんだよ!」
 思わず怒鳴るが、金の目は動かない。

「何故怒る?」
「何故って……!」
「僕が言ったから滅びたとでも言うのか? ……それこそ愚かだな。自業自得なくせに……!」

 冷ややかに突き放すような物言いに、サキは口を閉ざす。
 そんな彼を見て、影は一歩下がった。
「……! どこへ行く!」
「別に。もう用はないだろう」
 まるでここにいることが堪えられないかのような、かすかな声の震えに、サキはけれど引き止めてしまう。
「ちょっと待てよ! ……自業自得ってどういうことだ」
「言ったはずだ。それが、わからないからお前は愚かなんだと……!」

 その言葉をさえぎるようにサキが叫ぶ。
「わかるものか!」

「……何故わからない! お前が……、お前こそが……!!」

 突然声を荒げた影に、サキが驚いた目を向ける。
 影は小さく舌打ちすると、身を翻した。
「待て……!」

「お前は、わかるはずなんだ……」

 かき消されそうなほどの声。
 サキは追おうと立ち上がるが、脚がもつれて手をついてしまう。

 顔を上げたとき、そこには誰もいなかった。
 周りを見回しても、見えるのは風にそよぐ草と、遠くに見える建物の影だけだ。
 ため息をついて仰向けに倒れる。

 いつもより大きく見える月たちは、サキの真上にあった。
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