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2012/02/05 (Sun)
「サキ、少しいいですか?」

 翌朝、まんじりともせずにベッドに横たわったままだったサキは、ミカゲの声に身体を起こした。
「どうしたんだ?」
 声をかけてから、ドアを開ける。
 不安そうな面持ちのミカゲが立っていた。

「話が、……ッ!?」
 言いかけたときに、また地震が起きた。
 このごろ立て続けだと思いながら、サキは厭な予感が広がっていくのを感じていた。
 揺れはそんなに長くかからなかった。
 少し収まったのを感じて、サキはつかまっていた扉から手を離す。
「今のは、……まさか」
 ミカゲが呟く。

 苦虫を噛み潰したような顔で、サキが問い掛ける。
「ミカゲ、……さっきの話は……?」

「……中央に、行きませんか?」

 決意に満ちた表情をした彼は、けれどサキを見てはいないようだった。
 翳のある瞳。
「……ミカゲ?」
「中央には神がいるんでしょう? ……だとしたら、何とかなるんじゃないですか?」
 何の感情もこもっていないような声。
 自分こそが、それを信じていないのだと。

 奇跡などないのだと。
 言っているように感じられる。

 サキは決めなければならなかった。
 中央に行ったところで救われるのかわからない。
 けれど。

「わかった……。行こう」

「サキ様! 大丈夫ですか!?」
「レイラ」
 あわただしく駆け込んできたのはレイラだった。
 いつもどおりの。
 どこかにぶつけたのか、右腕に小さな傷がある。
「レイラ、その傷は? どうしたんだ」
「あ、さっきの地震で……」
 腕を見下ろして苦笑する。

 大丈夫そうだと判断して、サキは少し表情を改めた。
「レイラ、俺たちは今から中央に行って来る。……君も来るか?」
「中央に、ですか……?」
 驚きを隠せない表情で、レイラはサキを、次いでミカゲを見た。
 一瞬目を伏せると、サキを見てきっぱりと言った。

「私も、行きます」

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