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2024/11/24 (Sun)
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2012/02/05 (Sun)
 そこはメリーディエースと大して変わらなかった。
 大地など跡形もない。

「そんな……」
 絶望に彩られた瞳を見開く。
 まだ何もしてないのに。
 こんなに早く!

「サキ様!」
 レイラの声に、彼女が指差す方向を見る。
 誰かが倒れていた。
「……ッ……! ミカゲ……!」
 弾かれたように走り出すサキに数歩送れてレイラが走る。

「ミカゲ! ……ミカゲ!!」

 せきこんだように抱き起こす。
 少しめがねが曇っている。
 それ以外特に変わった様子はない。
 揺さぶると、かすかにうめいて目を開いた。

 まだ焦点の定まらぬ目で周りを見ているが、はっとしたようにサキを見ると、袖口を掴んできた。
「シルウァは……街のみんなは!?」
 サキが答えられずにいると、ミカゲは大地のあったほうに顔を向け、肩を震わせた。
「さっきの、地震ですか?」
 レイラが聞いているが、それには答えられず、ミカゲはふらりと立ち上がると、今はもう崖になっているところに向けて歩き出した。
「……ミカゲ!」
 サキが慌てて止める。
 なおも前に進もうとするので掴んだ腕に力をこめる。

 彼は不意に力を抜き、膝を落した。

「何故……私はここにいるのでしょう」

 虚ろな瞳で。
 ぽつりと呟く。
「どうして……!」
 ミカゲは片手で顔を覆うと、声を出さずに肩を震わせた。

 彼が、ミカゲが今ここにいるのは、シルウァのおかげだという。
 大地が揺れ始めたとき、彼らは街に帰っていく途中だった。
 とっさに、シルウァはミカゲを突き飛ばした。

 大地が傾きかけているのを悟ったからだった。突き飛ばした勢いそのまま、彼は大地とともに海に飲み込まれていった。

 ミカゲが助かったのは、運が良かったからとしか思えない。
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