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2012/02/05 (Sun)
 その視界の隅で何かが動いた次の瞬間、俺は伸ばした手でそのままルシェイドの肩を掴み、自分の後ろへ追いやった。
 かばうように、立つ。

 それはゆっくりと姿を現した。

 動きを見ればどこか狼のように、それはしなやかに眼前に立ちふさがった。
 体毛の一つも無いその身体はぬめりを帯びて僅かの明かりに光り、所々がグロテスクに節くれ立ち、脈動に合わせて波打っている。
 動きはしなやかなのに優雅さは欠片も無い。

「ライナート」
 低い、抑えた声。
 ウォルファーか。
「何だ」
 視線は目の前のモノに据えたまま、短く答える。
「囲まれてる」

「……判ってる」
 舌打ちしたい気分だ。
「ルシェイド、防御を頼む」
 後ろに居る彼に囁くが、返事が返ってこない。

「おい」
 少し声を大きくして呼ぶが、それでも動きが無い。
 再度声をかけようとしたとき、目の前の獣が動いた。
 姿勢を低く構える。
 飛び掛る気か。
 注意を目の前の、そして周りの獣に振り分けた時、背後からぽつりと小さな声が聞こえた。

「ごめんね」

 何、と振り返ろうとして、いきなり吹き掛けてきた熱気に目を細める。
 熱源はルシェイドだ。
 緩く差し招かれるように伸ばした手に、赤く輝く炎が形作られていた。
 徐々に姿を変え、大きくなっていく。

 火の、魔法。
 こんな、閉鎖空間でか!

 火はこういう空間で使うには加減が難しい。
 弱すぎれば敵は倒れず、強すぎれば味方も死ぬ。
 火の勢いはどんどん強くなっていく。
 視線は獣に送ったまま。

 その時、別の気配が感じ取れた。
 ぼんやりと周囲の壁が青白く光る。
 複雑に描かれた模様。
 構成は読み取れる。

 これは魔法、だ。
 効果は、反射。
 炎を返されたらひとたまりもない。
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