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2012/02/05 (Sun)
 後ろを振り返れば格子と、そこから逃げ出している人々が見えた。
 本当にあまり進んでいなかったらしい。
 前にはルシェイドの後姿がぼんやりと見えた。
 こちらに背を向けて、立ち止まっている。
 先程の俺のように囚われているとは考えにくい。
 何を見ているのか。
 何に、気を取られているのか。
 近寄ろうとして、ぎくりと足を止めた。

 止めた、というより意思に反して止まった。
 あれは、何だ?

 ルシェイドの前に立つモノ。


 否。
 在るモノ。

 それは、人とも獣ともつかないモノだった。
 醜悪な。
 白い、肉塊。
 所々突き出しているものは、細い、人の手足に似ていた。
 複数の生き物を無理やり合成させたようなそれは、けれど全体でみればまるで赤子のような形態をしていた。
 どくり、と規則的に脈打つ身体。
 太い、血管であろうものが浮き上がっている。

 吐き気がした。
 今まで見た獣以上に、この生き物を見るのは耐え難い。
 生き物と、言って良いモノかすら分からないけれど。
 それは強そうには見えない。
 けれど肌が粟立つ。
 逃げろと、本能が警鐘を鳴らす。
 居てはならない。
 それの前に居れば、まず間違いなくこちらの命が失われる。
 なのに。

 あいつは、何をやっているんだ。

 ルシェイドは無防備に立ったままだ。
 ともすれば怯みそうになる身体を叱咤して、ルシェイドの傍に走り寄る。

 空気が重い。
 先程の闇とは違う、精神的な重圧。
 歯を食いしばって耐える。
 ルシェイドはほんの少し、悲しみを含んだ目で目の前のそれを見つめている。
 重圧など感じないかのように。
「ルシェイド……!」
 ぐ、と肩を掴む。
 びくりと身体を震わせて、彼は振り返った。
 目は純粋な驚きに満ちている。
「……ライナート?」
「何やってんだ……ッ!」
 言って、それの前から下がらせようと力を込めた時、ルシェイドは俺の腕を振り払って庇うように前に立った。







 瞬間、『それ』が鳴いた。
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