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2012/02/05 (Sun)
 聞き覚えのある声に、振り返らずに答える。
「何って見りゃ分かるだろ。侵入者を排除しようとしてるんだ」
 ひょい、と視界の隅に頭が見えた。
 珍しい青緑の髪。
 魔族ではないらしいが、では何かと問うといつもはぐらかされてしまう。

 名を、ルシェイドという。
 何処から来てるのか知らないが、最近は割合良く来る。
 リーヴァセウスの客だ。

「ふーん……?」
 ルシェイドはしゃがみ込むとそいつと視線を合わせた。
 そいつはやはりきょとんとした表情でルシェイドを見返している。
「んー……」
 間延びした声を出しながら、彼は手に持っていた杖で侵入者を殴った。
 いきなりの事に発動しようとしていた魔法の構成が一瞬で崩れる。
 勢いがあったのだろう、そいつは後ろの壁にも頭をぶつけた。
 ガン、といい音がする。

「起きた?」
「……つーかそれ以前に目、回してんぞ」
 起こそうと殴ったらしいが、むしろ逆効果だ。
「お前そいつに何か恨みでもあんのか」
「え、別に無いよ。初対面だし」

 ……初対面の相手にこの仕打ち。
 半ば虚ろな目で視線を動かしていると、でも、と呟く声が聞こえた。
「害は無いと思うよ」
「何だそりゃ。勘か」
「まぁそうだね」
 俺は溜め息をついて倒れこんだ奴の傍にしゃがみ込んだ。
「……それは、信用していいんだな?」
「うん。良いよ」
 にこりと、ルシェイドが笑って返す。
「こんな所に置いといても邪魔だし、運んじゃおうよ」
 とは言うものの、中身は知らないがルシェイドは見た目子どもだ。
 腕だって俺より随分細い。
 運ぶのは俺の役目だ。
 だが俺だって人一人担げば行動に支障が出る。
 子供ならまだしも、そいつはまだ若そうだが、俺と同じくらいの体躯だ。

「ルシェイド、重さのかけてくれ」
 言いながらそいつに手を伸ばし、担ぎ上げた。
 特に重さは感じない。
 ふと見ると、ルシェイドが侵入者の服の裾を掴んでいた。
 今、ルシェイドに頼んだのは、重さを制御する魔法だ。
 俺の知る限りでは、ルシェイドが最も魔法に長けている。
 本人にどのくらい使えるのか聞いてみたところ、およそ現存する魔法はすべて使えるらしい。

 嘘か本当か知らねぇけど。
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