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2012/02/05 (Sun)
 空き室に放り込み、いくつかの魔法を部屋にかけてから二人のところに戻る。

「もう……良いよ」

 リーヴァセウスの声だ。
 疲れたような、諦めたような、声だ。
 滅多に見せない、響き。

「何が良いんだよ。僕は嫌だ」
「子どもみたいな駄々をこねるなよ」
「この世界で過ごした年月を計算すれば、僕は君よりずっと年下だよ」

 どういう意味だろう。
 なんとなくその場で立ち止まってしまう。
 盗み聞きなんてあんまりしたくはなかったが、入っていけない深刻さがある気がした。

「まぁそうかもしれないけど……でも、やっぱり無茶はして欲しくないよ」
 溜息交じりの声。
 そこへ。


「何が無茶なんだよッ!」


 突然の怒鳴り声に身が竦む。
 俺が怒鳴られてるわけじゃねぇのに。
 しかし、ルシェイドの大声なんて初めて聞いた。
 こんな、苦痛に満ちた声なんて。

「何か……何かあるはずだよ! このままなんてあるはずない……ッ」
「……これは、もう仕方ないよ。私が、選んだ事だから」
「どうして其処で諦められるんだよ! 結果なんて知りもしなかったくせに!」
「でも、私は、その所為で君が倒れるところは見たくないよ」

「……知らなかったの? リィズのおかげで僕は死なないって」
 ルシェイドの声に自嘲の響きが混ざる。

 これ以上は限界だ。
 俺はわざと足音を殺さずに歩いた。
 といっても大きい音を立てて歩いたわけじゃない。
 そんな事をすれば聞いてたってのが分かり易すぎるからな。
 角を曲がり、二人の姿が視界に入るようになってから速度を緩める。

「テメェ倒れるくらいなら魔法なんざ使わずにさっさと休めよ」
 毒づくのはルシェイドに向かって。
 彼は、あー、とか言いながら視線を泳がせた。
「……ごめんね? 大丈夫だと思ったんだよ」
「けど全然大丈夫じゃなかったと」
 じと目で言うと、図星だという顔で黙り込んだ。
 実に分かり易い。
 実年齢は知らんがこの辺は見た目相応だな。
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