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2012/02/05 (Sun)
「おい、起きろ」
「んー。何?」
 ぼんやりと薄目を開けるルシェイドに、フォリィアは呆れたような声を出した。
「お前が起こせと言ったんだろうが」

 ふと外を見ると太陽が見えた。
 眩しさに目を閉じる。
 少し赤味の増した外は、もうすぐ日暮れが近いことを示していた。
「あーそういや言ったっけ?」
 瞼を手の甲でこするその仕草が妙に子供っぽくて、フォリィアは変な顔をした。
 それを見てルシェイドが片眉を上げる。
「なんて顔してんのさ……。ディリクはまだ?」
「起きないな」
「じゃあ、行こうか……」
「行き先を聞いてないんだが……」
 立ち上がったルシェイドに、フォリィアが呟く。
「行ってからのお楽しみ。つかまって」
 言われたとおりにルシェイドの袖を掴む。

 一瞬の変化だった。
 ぐにゃりと世界が回ったような感じ。
 天と地が逆になって自分の上にのしかかってくるような。
 奇妙な圧迫感。

「フォリィア!」

 ルシェイドの声にはっとする。
 そこは見慣れない部屋だった。
 四面のうち一面がすべて窓だ。光はそこから入ってきている。

 眩しすぎるくらいの光量。
 光の世界。

 窓の向かいにドアがひとつ。その右の壁にも。
 左の壁には絵画が飾ってあった。
 それはこの部屋にそぐわない夜の
(現界の?)
 絵だった。
 中央には机と椅子。どうやら応接室のような、それ。
 他には棚があるくらいだ。
「ここは……」
「ホントは駄目なんだけど、お詫びにね」
 いたずらっぽく人差し指を口に当てて微笑む。
「僕がいいと言うまで、ここと、この隣の部屋から出てはいけないよ? いいね」
 ルシェイドは今立っている床と、右側の扉を指差して言った。

「あそこは?」

 正面の扉を指差してフォリィアが問う。
「あれは外に行ってしまう。駄目だよ」
「……」
「さあ、行きなよ。気が済んだら呼んでね。僕は寝ることにするから」
 そういうと、ルシェイドはかすむように宙に消えた。

 しばらくそこに立ち尽くしていたが、フォリィアはため息をつくと右側の部屋の扉に手を掛けた。
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