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2012/02/05 (Sun)
 ふと真顔になって、フォリィアが呟く。
「けれど、その来てはいけない所に何故ルシェイドは私を呼んだのだろう」
 エディウスはじっと彼を見つめている。
 その表情に居たたまれなくなって、口を開く。
「……言いたいことがあるなら言ってくれないか」
 黙って見ていられると居心地が悪い。
「……ここは、神界の城なんだよ。……ぼくが、生活する、……空間だ……」
 ぽつりと、いつもよりさらに聞き取りにくい声。
 ただ黙して次の言葉を待つ。

「…………償いの、つもりかも……しれない……」
「え……?」
 ほとんど聞き取れなくて、思わずフォリィアが聞き返す。
 エディウスは彼に視線を向けると、目を閉じた。
「……何でも、ないよ……」
 青ざめたその顔を見て、フォリィアは眉を寄せる。
「やはり本調子ではないのだな。……すまない。安静にしていなければならないのだろう?」
「一応は……でも、皆……ルシェイドが診たんだからって……あんまり重病人、扱いは……してくれないよ……?」
 くすりと微笑んで、目を閉じる。
 フォリィアは憮然とした表情をして、腕を組んだ。
「だからといって過信するわけにもいかないだろう。刺されたんだから」
「……そういえば……あの子、は……?」
「あの子? ……ああ、ルークのことか?」
 エディウスが頷くと、フォリィアは怪訝そうな顔をした。
「多分大丈夫だといっていたが、……そう年も変わらなそうなのに、ずいぶん年下に対する言い方だなぁ」
 きょとんとしてエディウスが答える。
「……だって、……まだ100年くらいしか生きてないでしょう」
「そうだが……」
 答えると、わずかに頷いてエディウスは沈黙してしまう。

「……ぼくらは……寿命に差があるんだよ……」

 小声でささやかれた言葉に、フォリィアは首をかしげる。
「寿命に……差?」
「……ぼくは……まだ、半分しか……生きていない……」
 そのとき目を伏せたエディウスの表情がとても悲しそうで。
 フォリィアは口を噤んだ。

「……君も、ぼくより……先に、死ぬんだ」
 囁きは小さく、ともすれば聞き逃しそうなほどだった。
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