「さて。大丈夫かな～」
　ルシェイドは、ひょい、と牢の中を覗く。
　続けてフォリィアも覗く。
　ディリクは後ろから黙って見ていた。
　牢の中は出て行ったときとさほど変わっているようには見えなかった。

　相変わらず、薄暗い。

「まだ寝てるみたいだな」
　看守部屋から取ってきた鍵で、牢の鍵を開ける。
　ガチャンと派手な音が響いた。
　思ったより大きな音に、ルシェイドが眉をひそめる。
「もうちょっと静かにやりなよ」
「無茶言うな」
　しかめ面で返しながら、牢をあけた。
　3人が中に踏み込む。
　ディリクとルシェイドが、ルークの傍で膝をつく。
　何もできそうにないと判断して、フォリィアは入り口に立ったままだ。
　手に持った鍵がちりりと微かな音を立てる。

　ルークの顔を覗き込んだり手を翳していた二人が、小声で囁きあう。
「どう？」
「……難しいが……不確定要素は少ない方だろう」
「そうだね……。意識が戻らないことには、はっきりと判断を下すのは危険、かな」
　ルシェイドはくるりと振り返ると、手持ちぶたさで立っていたフォリィアを呼んだ。
「何だ？」
「彼を起こしてくれないかな」
　さらりと言われたことに怪訝そうな顔をする。
　が、普通に起こす、ということなのかと納得して、フォリィアはルークの肩に手をかけて呼びかけた。
「ルーク。……起きろ」
　彼は身じろぎをして、薄く目をあけた。

　薄い緑の目があらわになる。
「外見変化なし」
「だね」
　囁きかわす彼らの声が聞こえないかのようにルークは瞬きすると、フォリィアを見上げ、体を起こした。

「兄上」
「？」

　呟かれた言葉がにわかに信じられず、フォリィアは思わずルークの顔をじっと見つめた。