小説用倉庫。
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「いつもみたいに飛ばないのか?」
急ぎ足で隣を行くラナに、ちらりと視線を投げながらウェルが問う。
「……行けねぇよ。知ってんだろ? 今のあいつの近くに飛ぶなんて、自殺行為だ」
「そうだな」
不貞腐れたようにそっぽを向く彼に苦笑する。
不意に、ラナが視線を上げた。
歩調が緩まり、やがて足を止める。
数歩先に行ってから、ウェルが振り返って問うた。
「ラナ?」
「何かいる」
短く答えると、ラナは前方に視線を向けたまま走り出した。
「一体誰が……」
「分からねぇ。ただ、唐突に現れやがった。……リィの所に」
付け足された最後の言葉に、ウェルが顔を強張らせた。
「……そんなことが出来るのは……」
「!」
二人は同時に顔を見合わせた。
一人の人物が思い至ったのと、先程から感じていた圧迫感が消えたからだ。
ラナが無言で残り僅かの距離を走り、扉に手をかける。
彼の開いた扉へ、ウェルが飛び込んだ。
「やぁ。思ったより遅かったね」
部屋の中央には、こちらを振り返って微笑む人影があった。
金色の瞳が、面白そうに細められている。
その向うには白いシーツのかかったベッドがあり、白い髪の人物が横たわっていた。
「リィ……」
ラナが呻く。
その横で、ウェルはベッドの人物を見る。
横たわったまま動きはない。
顔色の悪さに血の気が引くが、胸の辺りが僅かに上下しているのを見て取って安堵の息をつく。
「そんなに睨まなくても、彼は無事だよ」
す、と手を伸ばし、ベッドの人物の額に当てる。
それを見てラナが怒鳴った。
「リィに触るなッ!」
勢いのまま傍に走り、リィを抱き寄せる。
その侵入者の手から、護るように。
「相変わらず君は僕が嫌いなようだね、ラナ?」
「……ルシェイド、何故、此処に?」
ラナの怒りが強まったのを感じて、ウェルが半ば慌てて注意を引く。
「うん? あぁ、ちょうどね、近くに来てたんだけど、リィに呼ばれたから来てみたんだよ」
彼は苦笑して、リィに視線を戻した。
それに呼応するようにリィがぼんやりと目を開く。
薄い水色の瞳が緩く瞬きを繰り返す。
「……ラナ?」
自分を捕まえている腕を見て、小さく呟いた。
それから正面に立つ人物に、笑顔を向ける。
「お目覚めかな? リィ、呼ぶのは良いけれど、全力で呼ばなくても聞こえるから、今度からは加減するようにね」
「ルシェイド」
リィはラナの腕から抜け出すと、ルシェイドに向かって手を差し伸べた。
「ん? ……やれやれ。仕様が無い子だな」
苦笑して、ルシェイドがリィを抱き上げる。
リィの体格は、ウェル達より少し小さい。
だが、ルシェイドの体格はリィと大差ない。
自分と同じくらいのリィを抱き上げながら、激しく睨みつけるラナと心配そうに見ているウェルへと視線を移す。
「心配しなくても落としたりしないよ。……それより、お客さんが来ているみたいだけど?」
指摘すると、ウェルがはっとしてリィに視線を送る。
「客室に案内しているんだ。巻き込まれないように鍵を掛けてきたんだけど……」
ルシェイドが無言でウェルを指差す。
正確には、ウェルの背後を。
驚いて振り返ると、其処には客人が居た。
「えと、タイミング悪かった……?」
恐る恐る、レインが声をかける。
「扉は……鍵がかかっていたはずです」
ウェルが呆然と呟く。
「え、押したら開いたよ?」
きょとんとして答えるレインの後ろから、ルベアが顔を覗かせた。
「俺が試した時は開かなかったんだがな」
「まぁ気分も良くなったし、行ってみようってことで」
尻尾を揺らしながら、オルカーンが付け足した。
「まぁ良いんじゃない? 遅かれ早かれ挨拶させに来させたんでしょ?」
のんびりとルシェイドが言う。
ウェルは困ったように一堂を見渡し、最後にラナと視線を合わせた。
不機嫌そうな顔で、ラナが立ち上がる。
急ぎ足で隣を行くラナに、ちらりと視線を投げながらウェルが問う。
「……行けねぇよ。知ってんだろ? 今のあいつの近くに飛ぶなんて、自殺行為だ」
「そうだな」
不貞腐れたようにそっぽを向く彼に苦笑する。
不意に、ラナが視線を上げた。
歩調が緩まり、やがて足を止める。
数歩先に行ってから、ウェルが振り返って問うた。
「ラナ?」
「何かいる」
短く答えると、ラナは前方に視線を向けたまま走り出した。
「一体誰が……」
「分からねぇ。ただ、唐突に現れやがった。……リィの所に」
付け足された最後の言葉に、ウェルが顔を強張らせた。
「……そんなことが出来るのは……」
「!」
二人は同時に顔を見合わせた。
一人の人物が思い至ったのと、先程から感じていた圧迫感が消えたからだ。
ラナが無言で残り僅かの距離を走り、扉に手をかける。
彼の開いた扉へ、ウェルが飛び込んだ。
「やぁ。思ったより遅かったね」
部屋の中央には、こちらを振り返って微笑む人影があった。
金色の瞳が、面白そうに細められている。
その向うには白いシーツのかかったベッドがあり、白い髪の人物が横たわっていた。
「リィ……」
ラナが呻く。
その横で、ウェルはベッドの人物を見る。
横たわったまま動きはない。
顔色の悪さに血の気が引くが、胸の辺りが僅かに上下しているのを見て取って安堵の息をつく。
「そんなに睨まなくても、彼は無事だよ」
す、と手を伸ばし、ベッドの人物の額に当てる。
それを見てラナが怒鳴った。
「リィに触るなッ!」
勢いのまま傍に走り、リィを抱き寄せる。
その侵入者の手から、護るように。
「相変わらず君は僕が嫌いなようだね、ラナ?」
「……ルシェイド、何故、此処に?」
ラナの怒りが強まったのを感じて、ウェルが半ば慌てて注意を引く。
「うん? あぁ、ちょうどね、近くに来てたんだけど、リィに呼ばれたから来てみたんだよ」
彼は苦笑して、リィに視線を戻した。
それに呼応するようにリィがぼんやりと目を開く。
薄い水色の瞳が緩く瞬きを繰り返す。
「……ラナ?」
自分を捕まえている腕を見て、小さく呟いた。
それから正面に立つ人物に、笑顔を向ける。
「お目覚めかな? リィ、呼ぶのは良いけれど、全力で呼ばなくても聞こえるから、今度からは加減するようにね」
「ルシェイド」
リィはラナの腕から抜け出すと、ルシェイドに向かって手を差し伸べた。
「ん? ……やれやれ。仕様が無い子だな」
苦笑して、ルシェイドがリィを抱き上げる。
リィの体格は、ウェル達より少し小さい。
だが、ルシェイドの体格はリィと大差ない。
自分と同じくらいのリィを抱き上げながら、激しく睨みつけるラナと心配そうに見ているウェルへと視線を移す。
「心配しなくても落としたりしないよ。……それより、お客さんが来ているみたいだけど?」
指摘すると、ウェルがはっとしてリィに視線を送る。
「客室に案内しているんだ。巻き込まれないように鍵を掛けてきたんだけど……」
ルシェイドが無言でウェルを指差す。
正確には、ウェルの背後を。
驚いて振り返ると、其処には客人が居た。
「えと、タイミング悪かった……?」
恐る恐る、レインが声をかける。
「扉は……鍵がかかっていたはずです」
ウェルが呆然と呟く。
「え、押したら開いたよ?」
きょとんとして答えるレインの後ろから、ルベアが顔を覗かせた。
「俺が試した時は開かなかったんだがな」
「まぁ気分も良くなったし、行ってみようってことで」
尻尾を揺らしながら、オルカーンが付け足した。
「まぁ良いんじゃない? 遅かれ早かれ挨拶させに来させたんでしょ?」
のんびりとルシェイドが言う。
ウェルは困ったように一堂を見渡し、最後にラナと視線を合わせた。
不機嫌そうな顔で、ラナが立ち上がる。
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