小説用倉庫。
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「あ」
森のような所をどんどん進んでいき、視界が悪くなってきた頃、アィルが声を上げた。
「あいつあんなところに」
呆れた口調に、ルベアは顔を上げた。
前方、丈の高い草の向こうに、人影が見えた。
その横顔が見えた途端、ルベアは全身から血の気が引くのが分かった。
薄い青銀の髪は腰よりも長い。
そしてレインに似た、その顔が。
忘れもしないその姿。
指先が冷えていく。
心臓は早鐘のように鳴り響き、煩いくらいだ。
ざわりと殺気だったルベアの気配に気づいたのか、アィルが驚愕の面持ちで振り返る。
だがその瞬間、ルベアは彼の脇をすり抜けて前方の人影へと踊りかかっていた。
走りながら抜き放った剣を、人影へと振り下ろす。
「ヴィオルウスッ!」
背後からアィルの悲鳴じみた声。
彼はその声と迫り来るルベアを見て、間一髪で刃をかわした。
「何……誰!?」
声には驚愕と恐怖があった。
距離を取ったヴィオルウスに剣の先を向けて、ルベアは声を押出した。
「忘れたとは言わさない。お前が滅ぼした町のことを!」
怒りを押し殺したその声を聞いた瞬間、ヴィオルウスの顔が青ざめた。
覚えているのか。
当たり前だ。
忘れたなどと言おうものなら八つ裂きにしても飽き足らない。
「お前が奪ったんだ。俺の家族を、友人を、町を! ……お前がッ!」
ヴィオルウスは青ざめたままルベアを見返している。
苦痛を堪えるかのような、その表情。
「お前が殺したんだッ!」
叫びながら、剣を振り上げる。
ヴィオルウスは悲しげな視線をルベアに向けた後、静かに目を閉じた。
振り下ろされる刃を止めようとしない。
ルベアも、止める気は無い。
勢いのまま振り下ろされた刃は、当たる寸前に甲高い音を立てて防がれた。
「アィル……」
間に割り込んだ人物の名を、驚愕に震える声でヴィオルウスが呼ぶ。
「……ッ、この……!」
アィルはルベアの剣を弾き、ヴィオルウスを庇うように剣を構える。
「ったく、冗談じゃないぜ! お前少しは抵抗しろよ!」
「だって……」
怒鳴られたヴィオルウスは情けない声で呟いた。
「私が殺したのは、事実だから……」
「だから大人しく殺されてやるってか? 何度目だお前。そういうやつ片っ端から相手にしてたらお前何回死ねば済むんだよ」
半ば呆れた口調で言われ、ヴィオルウスが言葉に詰まる。
「それとあんた。……名前聞いてなかったなぁまぁいいや。後で聞く。敵討ちの為だってんなら殺させるわけにはいかない。そんな理由で、人を殺したって誰も喜ばないし、お前だって、救われねぇよ。……それでも殺したいってんなら」
油断無くルベアに視線を送り、一度大きく息を吸うと、言葉と共に吐き出した。
「俺がまず相手になる」
「アィル!」
止めようとする、ヴィオルウスの声を視線で黙らせ、アィルは一歩踏み出した。
表情は真剣そのものだ。
森のような所をどんどん進んでいき、視界が悪くなってきた頃、アィルが声を上げた。
「あいつあんなところに」
呆れた口調に、ルベアは顔を上げた。
前方、丈の高い草の向こうに、人影が見えた。
その横顔が見えた途端、ルベアは全身から血の気が引くのが分かった。
薄い青銀の髪は腰よりも長い。
そしてレインに似た、その顔が。
忘れもしないその姿。
指先が冷えていく。
心臓は早鐘のように鳴り響き、煩いくらいだ。
ざわりと殺気だったルベアの気配に気づいたのか、アィルが驚愕の面持ちで振り返る。
だがその瞬間、ルベアは彼の脇をすり抜けて前方の人影へと踊りかかっていた。
走りながら抜き放った剣を、人影へと振り下ろす。
「ヴィオルウスッ!」
背後からアィルの悲鳴じみた声。
彼はその声と迫り来るルベアを見て、間一髪で刃をかわした。
「何……誰!?」
声には驚愕と恐怖があった。
距離を取ったヴィオルウスに剣の先を向けて、ルベアは声を押出した。
「忘れたとは言わさない。お前が滅ぼした町のことを!」
怒りを押し殺したその声を聞いた瞬間、ヴィオルウスの顔が青ざめた。
覚えているのか。
当たり前だ。
忘れたなどと言おうものなら八つ裂きにしても飽き足らない。
「お前が奪ったんだ。俺の家族を、友人を、町を! ……お前がッ!」
ヴィオルウスは青ざめたままルベアを見返している。
苦痛を堪えるかのような、その表情。
「お前が殺したんだッ!」
叫びながら、剣を振り上げる。
ヴィオルウスは悲しげな視線をルベアに向けた後、静かに目を閉じた。
振り下ろされる刃を止めようとしない。
ルベアも、止める気は無い。
勢いのまま振り下ろされた刃は、当たる寸前に甲高い音を立てて防がれた。
「アィル……」
間に割り込んだ人物の名を、驚愕に震える声でヴィオルウスが呼ぶ。
「……ッ、この……!」
アィルはルベアの剣を弾き、ヴィオルウスを庇うように剣を構える。
「ったく、冗談じゃないぜ! お前少しは抵抗しろよ!」
「だって……」
怒鳴られたヴィオルウスは情けない声で呟いた。
「私が殺したのは、事実だから……」
「だから大人しく殺されてやるってか? 何度目だお前。そういうやつ片っ端から相手にしてたらお前何回死ねば済むんだよ」
半ば呆れた口調で言われ、ヴィオルウスが言葉に詰まる。
「それとあんた。……名前聞いてなかったなぁまぁいいや。後で聞く。敵討ちの為だってんなら殺させるわけにはいかない。そんな理由で、人を殺したって誰も喜ばないし、お前だって、救われねぇよ。……それでも殺したいってんなら」
油断無くルベアに視線を送り、一度大きく息を吸うと、言葉と共に吐き出した。
「俺がまず相手になる」
「アィル!」
止めようとする、ヴィオルウスの声を視線で黙らせ、アィルは一歩踏み出した。
表情は真剣そのものだ。
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