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2012/03/15 (Thu)
 怒りを押さえ込みながらも黙って聞いていたルベアは、アィルの宣言に目を細めた。
「……上等だ。まず貴様から血祭りに上げてやる」
 低い声で告げ、構えを変える。
 アィルは気圧されたかのように腕を震わせたが、顎を引いてそれを止めた。
 どうしたら良いか分からずに、ヴィオルウスはその場で二人を交互に見ている。

 空気が張り詰めていた。
 視線と気配で人が殺せるのなら、アィルは間違いなくこの場で命を落としているだろう。
 それ程の殺気を、アィルは唇を噛み締めて耐えた。

 汗が流れる。
 今日はそんなに暑くない。
 なのに。
 ほんの僅か、ルベアへと向けた切っ先がぶれた。
 その瞬間、それを合図にしたかのようにルベアが打ち込んできた。
 横から薙ぎ払われる剣を立てた刃で防ぐ。
 重い。
 直ぐに刃が返され、間髪いれずにアィルを切り伏せようとする。
 研ぎ澄まされた、殺意。
 ルベアは既に怒りを押さえ込んでいた。
 姿を見た瞬間に膨れ上がったその感情は、アィルとヴィオルウスのやり取りの間に僅かながら治まっていたからだ。
 けれどヴィオルウスへと、そしてアィルへと向けた殺意は本物だ。
 本気で、ルベアはこの二人を殺そうとしていた。

 何合と打ち合い、弾きあう。
 ルベアから見ればまだ少年なのに、剣の腕は確かだった。
 一介の薬師にしては奇妙なほどに。
 オルカーンよりは強そうだが、実戦経験には乏しいようだ。
 フェイントを混ぜると面白いように引っかかる。
 だが、速さはあるので幾つかは防がれた。
 打ち合ううちに、アィルの身体は細かい傷が多くなった。
 致命傷は一つも無い。
 さすがだと思う反面、動きが鈍くなってきたのにも気づいた。
 アィルは肩で息をしている。
 其処へ、思い切り振り下ろした。
 一際高い音を立てて、防がれる。
 が、その衝撃でアィルの膝が崩れた。
 振りぬくように弾くと、小さく悲鳴を上げて後ろに倒れる。
 倒れたまま起き上がれないアィルを見下ろすルベアの眼は、冷たく光っていた。

「これで、止めだ」

 その声は冷酷に響いた。
 アィルの眼が驚愕に見開かれる。
 明確な意思を持って、ルベアは剣を振り下ろした。
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