小説用倉庫。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
翌朝、窓から差し込む日の光と、階下での僅かな物音に目を覚ましたルベアは、一瞬自分が何処にいるのか分からなかった。
使われていなさそうな割には柔らかいベッドに身体を起こし、周囲を見回して昨夜を思い出す。
家の主は何をしているのか階段奥の部屋に閉じこもってしまったので、言われたように風呂に入り、部屋を借りた。
疲れていたのか眠りは直ぐに訪れた。
軽く身支度を整え、部屋を出る。
オルカーンはベッドの上の日の当たる場所で丸くなっていた。
階下に降りると、奥の部屋から出てくるアィルに会った。
「早いなぁ。まだ寝てても良かったのに」
屈託なく笑う彼は、外套を纏い、腰に剣を佩いている。
「出かけるのか」
「昨日足りないものがあるって言ったろ。取りに行くんだよ」
言って肩を竦める。
アィルの顔色が少し悪いことに気づき、ルベアは眉をひそめた。
「顔色が悪いぞ」
「あぁ。あんまり寝てないから。本当はもう少し時間をかけて作りたいんだけど……急いでるんだろ?」
寝不足の原因はルベア達の求める薬の所為らしい。
「さて。じゃあ行って来るわ」
「……ついて行っても?」
問うと、アィルは驚いた顔をしてから虚空を見つめ、うーんと唸った。
「まぁ問題はないだろうけど……ついて来ても面白いもんないよ?」
「此処にいてもやることがない」
「それはそうか」
あははと笑ってアィルは頷いた。
荷物を取りに二階へ上がると、オルカーンはまだ眠っていた。
起こすのもどうかと思い、扉の脇にメモを置いておくことにした。
階下に戻ると、アィルは食堂から出てくるところだった。
「食事用意しといたんだ。起きたら食べられるように。俺たちのはこっちに入ってるから」
アィルが荷物を示し、それから行こう、と促した。
「遠いのか?」
食事の用意があるということは、昼には確実に戻ってこれないということか。
そう思いつつ聞くと、アィルは首を傾げて言った。
「近くで済むかもしれないし、少し足を伸ばさなきゃならないかもしれない。まぁその時次第だな」
外に出ると日差しが眼に刺さった。
日は高くない為か、まだ周囲は暖まっていない。
慣れた足取りで歩き始めるアィルについて、ルベアも歩き出した。
暫く無言で歩きつづけた。
振り返ると、家はもう遠く、うっすらとしか見えなかった。
「……あの家には、一人で住んでいるのか?」
あの広い家に。
アィルは前方の草を掻き分けながら、そうだなぁと答えた。
「最近はもう一人、一緒に住んでるんだけど」
「あの家に、二人で?」
「あー、まぁ広いからなー。そいつが来る前は殆ど一人で住んでたよ」
何でもないことのように笑う。
だがもとよりあまり踏み込むつもりはない。
ルベアは、そうか、と答え、口を噤んだ。
「しかしまためんどくさいもの頼むよなぁ。この時期だから良かったけど、もう少し遅かったら無かったぜ」
「……すまん」
「良いって。代価はディリクに吹っかけるから。それにこの調合……魔獣だろ。しかもドロドロしたやつ」
ルベアは驚いたようにアィルの背を見る。
「分かるのか」
「当然。これで飯食ってんだから」
問うと、自信に溢れた声が返った。
わざわざシオンに来なくてもエールで十分間に合うのではないかと思っていたが、この答えになるほど、と思ってしまった。
「まぁ、苦手なものもあるんだけど」
苦笑して呟く。
苦手なものがある、という割には口調は明るい。
使われていなさそうな割には柔らかいベッドに身体を起こし、周囲を見回して昨夜を思い出す。
家の主は何をしているのか階段奥の部屋に閉じこもってしまったので、言われたように風呂に入り、部屋を借りた。
疲れていたのか眠りは直ぐに訪れた。
軽く身支度を整え、部屋を出る。
オルカーンはベッドの上の日の当たる場所で丸くなっていた。
階下に降りると、奥の部屋から出てくるアィルに会った。
「早いなぁ。まだ寝てても良かったのに」
屈託なく笑う彼は、外套を纏い、腰に剣を佩いている。
「出かけるのか」
「昨日足りないものがあるって言ったろ。取りに行くんだよ」
言って肩を竦める。
アィルの顔色が少し悪いことに気づき、ルベアは眉をひそめた。
「顔色が悪いぞ」
「あぁ。あんまり寝てないから。本当はもう少し時間をかけて作りたいんだけど……急いでるんだろ?」
寝不足の原因はルベア達の求める薬の所為らしい。
「さて。じゃあ行って来るわ」
「……ついて行っても?」
問うと、アィルは驚いた顔をしてから虚空を見つめ、うーんと唸った。
「まぁ問題はないだろうけど……ついて来ても面白いもんないよ?」
「此処にいてもやることがない」
「それはそうか」
あははと笑ってアィルは頷いた。
荷物を取りに二階へ上がると、オルカーンはまだ眠っていた。
起こすのもどうかと思い、扉の脇にメモを置いておくことにした。
階下に戻ると、アィルは食堂から出てくるところだった。
「食事用意しといたんだ。起きたら食べられるように。俺たちのはこっちに入ってるから」
アィルが荷物を示し、それから行こう、と促した。
「遠いのか?」
食事の用意があるということは、昼には確実に戻ってこれないということか。
そう思いつつ聞くと、アィルは首を傾げて言った。
「近くで済むかもしれないし、少し足を伸ばさなきゃならないかもしれない。まぁその時次第だな」
外に出ると日差しが眼に刺さった。
日は高くない為か、まだ周囲は暖まっていない。
慣れた足取りで歩き始めるアィルについて、ルベアも歩き出した。
暫く無言で歩きつづけた。
振り返ると、家はもう遠く、うっすらとしか見えなかった。
「……あの家には、一人で住んでいるのか?」
あの広い家に。
アィルは前方の草を掻き分けながら、そうだなぁと答えた。
「最近はもう一人、一緒に住んでるんだけど」
「あの家に、二人で?」
「あー、まぁ広いからなー。そいつが来る前は殆ど一人で住んでたよ」
何でもないことのように笑う。
だがもとよりあまり踏み込むつもりはない。
ルベアは、そうか、と答え、口を噤んだ。
「しかしまためんどくさいもの頼むよなぁ。この時期だから良かったけど、もう少し遅かったら無かったぜ」
「……すまん」
「良いって。代価はディリクに吹っかけるから。それにこの調合……魔獣だろ。しかもドロドロしたやつ」
ルベアは驚いたようにアィルの背を見る。
「分かるのか」
「当然。これで飯食ってんだから」
問うと、自信に溢れた声が返った。
わざわざシオンに来なくてもエールで十分間に合うのではないかと思っていたが、この答えになるほど、と思ってしまった。
「まぁ、苦手なものもあるんだけど」
苦笑して呟く。
苦手なものがある、という割には口調は明るい。
Comment
倉庫
管理者:西(逆凪)、または沖縞
文章の無断転載及び複製は禁止。
文章の無断転載及び複製は禁止。
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
カテゴリー
- ご挨拶。(3)
- [長編] Reparationem damni(12)
- [長編] Nocte repono rubei(72)
- [長編] Sinister ocularis vulnus (30)
- [長編] Lux regnum(61)
- [長編] Pirata insula(47)
- [長編] Purpura discipulus(43)
- [長編] Quinque lapidem(29)
- [短編] Canticum Dei(3)
- [短編] Candidus Penna(9)
- [短編] Dignitate viveret,Mori dignitas (11)
- [短編] Praefiscine(3)