小説用倉庫。
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不意に、オルカーンがその少年を見て声を上げた。
「アレン?」
「違う。あいつはもっと髪が長い。……あんたたち、誰?」
驚愕の声を一蹴して、少年は怪訝そうにこちらを交互に見た。
「ディリクから、此処に来るよう言われた。アィルという人物はいるか?」
「アィルは俺だ。……用件は?」
どうやら目の前の少年が、目的の人物らしい。
彼は不信そうな目でこちらを伺っている。
ルベアはディリクから貰った紙片を取り出すと、アィルに手渡した。
彼はそれにざっと目を通すと、一瞬険しい顔をした後、扉を大きく開けて脇にずれた。
「入って。お客さんみたいだ」
ルベアとオルカーンは少し躊躇いつつ、中に足を踏み入れた。
「俺たちはその品が手に入れば良いんだが……」
「これちょっと手間かかるし、材料足らないのあるから直ぐには渡せないんだ。今日はもう遅いし、泊まっていきなよ」
そう言って扉を閉め、廊下を少し進んだところで振り返った。
「夕飯は、食べたか?」
「いや……」
馬車の上で軽く食べただけだ。
質問の意図がよくわからず曖昧に返事をすると、じゃあそれからか、と呟いて、右の部屋に消えた。
どうしたら良いのか分からずに立ち竦む。
泊まると返事をしたわけでもない。
軽く溜め息をつきながら周りを見回す。
正面、廊下の先には二階へと続く階段。
階段の脇にも道があって、奥へ行くことが出来るようだ。
階段の陰になって見難いが、奥に扉が見える。
廊下の左右にはそれぞれ扉がある。
それだけ見ても広い内装だ。
家の中に、気配は感じられない。
アィルしか住んでいないとしたら広すぎる気がした。
その時、アィルがひょいと頭を覗かせた。
「何やってんの。こっち入って」
言われるままに入ると、良い匂いがした。
其処は食堂のようだった。
中央辺りに仕切りがあり、右側に机と椅子が、左側に調理器具などが並べてある。
アィルは左側から、椅子に座るよう促す。
程なく、幾つかの簡単な料理が運ばれてきた。
「これ食ったら片付けはしなくていいから。風呂は階段の横、部屋は2階の、鍵のかかってないとこ勝手に使っていいよ」
言い置いて出て行こうとするアィルに、ルベアが声をかける。
「……まだ泊まるとは行っていないんだが」
アィルは扉の前で肩越しに振り返りながら、ほんの僅かに苛立たしげな口調で言った。
「泊まれる所は此処以外ない。この辺、夜は危ないんだ。野宿なんて以ての外だぞ」
家から出るなよ、と言い捨て、アィルは足早に部屋を出て行った。
「……食べようよ」
足音を追っていたルベアは、オルカーンの声に振り返り、有り難く頂く事にした。
「……初対面の人間を家に上げて自由にさせとくっていうのも随分無用心だと思うんだが……」
料理を口に運びながらルベアが言う。
料理は美味しかった。
暫く手の込んだ温かい料理を食べていなかった所為もあるだろうが、身体に染み込むような気がした。
飢えた獣のように料理を平らげていたオルカーンは、ルベアの言葉に一瞬考え込んでから答えた。
「特に問題ないんじゃないかな」
「……そうか?」
「うん。ご飯美味しいし、変な気配はしなかったし」
こういうのを餌付けって言うんだろうな。
などと考えながら、ルベアは大人しく食事を再開した。
「アレン?」
「違う。あいつはもっと髪が長い。……あんたたち、誰?」
驚愕の声を一蹴して、少年は怪訝そうにこちらを交互に見た。
「ディリクから、此処に来るよう言われた。アィルという人物はいるか?」
「アィルは俺だ。……用件は?」
どうやら目の前の少年が、目的の人物らしい。
彼は不信そうな目でこちらを伺っている。
ルベアはディリクから貰った紙片を取り出すと、アィルに手渡した。
彼はそれにざっと目を通すと、一瞬険しい顔をした後、扉を大きく開けて脇にずれた。
「入って。お客さんみたいだ」
ルベアとオルカーンは少し躊躇いつつ、中に足を踏み入れた。
「俺たちはその品が手に入れば良いんだが……」
「これちょっと手間かかるし、材料足らないのあるから直ぐには渡せないんだ。今日はもう遅いし、泊まっていきなよ」
そう言って扉を閉め、廊下を少し進んだところで振り返った。
「夕飯は、食べたか?」
「いや……」
馬車の上で軽く食べただけだ。
質問の意図がよくわからず曖昧に返事をすると、じゃあそれからか、と呟いて、右の部屋に消えた。
どうしたら良いのか分からずに立ち竦む。
泊まると返事をしたわけでもない。
軽く溜め息をつきながら周りを見回す。
正面、廊下の先には二階へと続く階段。
階段の脇にも道があって、奥へ行くことが出来るようだ。
階段の陰になって見難いが、奥に扉が見える。
廊下の左右にはそれぞれ扉がある。
それだけ見ても広い内装だ。
家の中に、気配は感じられない。
アィルしか住んでいないとしたら広すぎる気がした。
その時、アィルがひょいと頭を覗かせた。
「何やってんの。こっち入って」
言われるままに入ると、良い匂いがした。
其処は食堂のようだった。
中央辺りに仕切りがあり、右側に机と椅子が、左側に調理器具などが並べてある。
アィルは左側から、椅子に座るよう促す。
程なく、幾つかの簡単な料理が運ばれてきた。
「これ食ったら片付けはしなくていいから。風呂は階段の横、部屋は2階の、鍵のかかってないとこ勝手に使っていいよ」
言い置いて出て行こうとするアィルに、ルベアが声をかける。
「……まだ泊まるとは行っていないんだが」
アィルは扉の前で肩越しに振り返りながら、ほんの僅かに苛立たしげな口調で言った。
「泊まれる所は此処以外ない。この辺、夜は危ないんだ。野宿なんて以ての外だぞ」
家から出るなよ、と言い捨て、アィルは足早に部屋を出て行った。
「……食べようよ」
足音を追っていたルベアは、オルカーンの声に振り返り、有り難く頂く事にした。
「……初対面の人間を家に上げて自由にさせとくっていうのも随分無用心だと思うんだが……」
料理を口に運びながらルベアが言う。
料理は美味しかった。
暫く手の込んだ温かい料理を食べていなかった所為もあるだろうが、身体に染み込むような気がした。
飢えた獣のように料理を平らげていたオルカーンは、ルベアの言葉に一瞬考え込んでから答えた。
「特に問題ないんじゃないかな」
「……そうか?」
「うん。ご飯美味しいし、変な気配はしなかったし」
こういうのを餌付けって言うんだろうな。
などと考えながら、ルベアは大人しく食事を再開した。
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