小説用倉庫。
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与えられた一室はかなり快適な部屋だった。
入って左側にはソファや椅子、テーブルが置いてあり、右側にはベッドが置いてある。
中央の壁には暖炉があり、今は火が灯っていた。
「……高い宿屋、みたいだね」
もの珍しげにきょろきょろしていたレインが感嘆の溜め息と共に言った。
使われていない、と言っていた割には手入れが行き届いている。
これも魔法か、と軽く溜め息をついて荷物を降ろした。
次の目的地は決定した。
会えなかったのは残念だったが、一応ヒントらしきものは手に入った。
「そういえばオルカーンに捜してる人が居たなんてびっくりしたよー」
暖炉の前にいくつかの枕を持ってきて座り込んでいたレインが、唐突に言った。
その言葉に、傍に行っていたオルカーンが僅かに身体を震わせたのが目に入った。
「あー……、言ってなかったけ?」
オルカーンが決まり悪そうに口を開く。
「うん。聞いてないよー」
あっさりと肯定すると、レインは積み立てた枕の上にごろりと横になった。
「……俺は別に積極的に探してたわけじゃないからなぁ。見つかるといいな、ぐらいだったし。居ない可能性も……あったから」
最後は囁くように言って、レインが置いた枕の内の大きめなそれの上に伏せた。
「でも、居るんでしょ? 良かったじゃない」
えへへ、と締まりの無い顔で笑って、レインはソファの一つに座るルベアに視線を向けた。
「ルベアは何で旅してるの?」
一度口を開き、また閉じる。
今。
平静に。
言える自信はない。
「そんなことより」
質問を素通りし、先程気になっていた言葉を聞いてみる。
「界渡りって何だ?」
聞いた途端、オルカーンの尻尾が波打った。
「あ、それオレも聞きたい」
枕から顔をあげてレインが言う。
オルカーンは耳を伏せ、あーともうーともつかない声を出している。
やがて意を決したのか、顔を上げると溜め息をついた。
「……上手く説明できるか自信ないんだけど」
そう前置きして、首を傾げた。
「この世界以外にも世界があるって、知ってるか?」
「知らないー」
レインが同じように首を傾げて答える。
同意見だったので、ルベアも微かに首を傾げた。
「……えぇと、世界は全部で三つあるんだ。神界と、魔界、それと現界。神界はよく知らないけど、魔界は俺が昔居た所、現界は此処の事」
「……此処って……此処?」
間の抜けた声でレインがおかしな質問をする。
「あー……そう。この三大陸とそれを囲む海を含めたこの世界のことだよ」
「他の世界なんて聞いたことが無いぞ」
「うん。普通の人は知らされないんだよ。人族は他の界では生きていけないから」
「生きて、いけない?」
不穏な言葉に眉をひそめる。
「人族は魔力を持たないから、空気に耐えられないって聞いた。同じような理由で、神界に住む者は魔界に、魔界に住む者は神界に行けない。現界に来るのは大丈夫みたいなんだけど」
「……成る程。それでその世界を移動するのが界渡りか」
ルベアが呟くように言う。
オルカーンが頷いてレインに視線を移すと、彼は不思議そうな顔をしていた。
「……わかんない?」
不安そうに聞くと、レインは違う、と言って首を振った。
入って左側にはソファや椅子、テーブルが置いてあり、右側にはベッドが置いてある。
中央の壁には暖炉があり、今は火が灯っていた。
「……高い宿屋、みたいだね」
もの珍しげにきょろきょろしていたレインが感嘆の溜め息と共に言った。
使われていない、と言っていた割には手入れが行き届いている。
これも魔法か、と軽く溜め息をついて荷物を降ろした。
次の目的地は決定した。
会えなかったのは残念だったが、一応ヒントらしきものは手に入った。
「そういえばオルカーンに捜してる人が居たなんてびっくりしたよー」
暖炉の前にいくつかの枕を持ってきて座り込んでいたレインが、唐突に言った。
その言葉に、傍に行っていたオルカーンが僅かに身体を震わせたのが目に入った。
「あー……、言ってなかったけ?」
オルカーンが決まり悪そうに口を開く。
「うん。聞いてないよー」
あっさりと肯定すると、レインは積み立てた枕の上にごろりと横になった。
「……俺は別に積極的に探してたわけじゃないからなぁ。見つかるといいな、ぐらいだったし。居ない可能性も……あったから」
最後は囁くように言って、レインが置いた枕の内の大きめなそれの上に伏せた。
「でも、居るんでしょ? 良かったじゃない」
えへへ、と締まりの無い顔で笑って、レインはソファの一つに座るルベアに視線を向けた。
「ルベアは何で旅してるの?」
一度口を開き、また閉じる。
今。
平静に。
言える自信はない。
「そんなことより」
質問を素通りし、先程気になっていた言葉を聞いてみる。
「界渡りって何だ?」
聞いた途端、オルカーンの尻尾が波打った。
「あ、それオレも聞きたい」
枕から顔をあげてレインが言う。
オルカーンは耳を伏せ、あーともうーともつかない声を出している。
やがて意を決したのか、顔を上げると溜め息をついた。
「……上手く説明できるか自信ないんだけど」
そう前置きして、首を傾げた。
「この世界以外にも世界があるって、知ってるか?」
「知らないー」
レインが同じように首を傾げて答える。
同意見だったので、ルベアも微かに首を傾げた。
「……えぇと、世界は全部で三つあるんだ。神界と、魔界、それと現界。神界はよく知らないけど、魔界は俺が昔居た所、現界は此処の事」
「……此処って……此処?」
間の抜けた声でレインがおかしな質問をする。
「あー……そう。この三大陸とそれを囲む海を含めたこの世界のことだよ」
「他の世界なんて聞いたことが無いぞ」
「うん。普通の人は知らされないんだよ。人族は他の界では生きていけないから」
「生きて、いけない?」
不穏な言葉に眉をひそめる。
「人族は魔力を持たないから、空気に耐えられないって聞いた。同じような理由で、神界に住む者は魔界に、魔界に住む者は神界に行けない。現界に来るのは大丈夫みたいなんだけど」
「……成る程。それでその世界を移動するのが界渡りか」
ルベアが呟くように言う。
オルカーンが頷いてレインに視線を移すと、彼は不思議そうな顔をしていた。
「……わかんない?」
不安そうに聞くと、レインは違う、と言って首を振った。
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管理者:西(逆凪)、または沖縞
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