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2012/02/11 (Sat)
 躊躇いがちな沈黙を破ったのはレインだった。
「その人っていつ帰ってくるの?」
 少しの逡巡の後、リィが言う。
「暫くは戻らない、と言っていました。この間出かけたばかりですから、あと2月は帰ってこないと思います」

「じゃあ行こうよ」

「は?」
 唐突に手を打ったレインに、全員が怪訝そうな顔をする。
「聖山に」
 レインはそんな皆の様子にも構わず、ルベアへと告げた。
「そうだなぁ……。どうせ行くんだし、良いんじゃないか?」
 のんびりとオルカーンが同意した。
「じゃあ向うで合流するわけだね。……リィ、彼女が帰ってくる時は君に連絡が来るんだったよね?」
「えぇ、その手筈になってます」
 リィが頷くと、ルシェイドは何処か楽しそうに懐から何かを取り出した。
「それじゃ、レインにはこれを貸してあげよう」
 差し出したレインの手に、小さな指輪が落とされた。

 銀色の、細い指輪だ。

「これは?」
 指輪を眺めながらレインが聞く。
「シェンディルからリィへの伝達を感知する魔法を組み込んだから、彼女が帰りの連絡をしたら分かるようになってるよ」
「……いつの間に」
 ぼそり、とラナが呟いた。
「用事が終わったらディリクに返しておいてくれれば良いから」


「……何故、こいつの名前を知ってる?」

 不意に、警戒も露わにルベアが言葉を遮った。
 その言葉に、一番きょとんとしているのは当事者であるレインだ。
「俺たちは一度もお前の前でこいつの名前を言ってないはずだ。何故知っている?」
「……もしかして、オレのこと知ってるの?」
 ほんの少しの期待を込めた目でレインがルシェイドを見る。
「んー、と」
 ルシェイドは腕組みをして逡巡した後、苦笑しながら頷いた。
「まぁ、知ってはいるよ」
「本当に?」
「うん。でも、教えてあげることは出来ないよ」
 あからさまにがっかりした様子のレインに、ルシェイドが困ったように笑う。

「どうして? 教えてくれないの?」
「教えてあげたいけれど、それは僕には出来ないんだ。君が心から望み、君に関係ある者がそれを許さなければ、僕は手を貸すことは出来ない」
「そういう約束?」
「まぁ、そうだね」
 リィの問いに、ルシェイドが曖昧に頷いて返す。
「オレ、記憶戻したいって思ってるよ」
 腑に落ちない、という表情でレインが言う。
「うん。でも、その気持ちはそんなに強くない。今のままでも良いと、何処かで思ってはいないかな?」
 レインが考え込むように視線を伏せる。
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