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2012/02/11 (Sat)
「あぁそうそう。界渡りの魔法は、僕らの間ではただ扉、とだけ呼んでいるんだよ。それじゃあね」
 ひらりと笑顔で手を振った次の瞬間、彼の姿は跡形も無く消えていた。
「早いな」
 誰に言うとも無く呟く。

「と、びら……」

 ほんの微かな囁きは、かろうじて聞こえるくらいのものだった。
 何処から、と思い見渡す。
 呆然と、虚空を見つめているのはレインだった。

 ウェルが音も無く傍らに移動する。
「……オレ……、どうして……」
 絞り出すような声で囁くと、両手で顔を覆う。
 そっとウェルがレインの肩に手を置いた。
 それに押されるように、レインは自身が積み立てた枕の中に倒れこんだ。
「レイン!」
 驚いて腰を浮かす。
 レインの顔を覗き込んだウェルが、ルベアに顔を向けて言った。
「大丈夫です。気を失っているだけですから」
 声にはほんの僅かの焦りと、安堵があった。

「記憶に……関わるものだったのかな」
 オルカーンがぽつりと言う。
「……さぁな。俺達はまだ其処まで辿り着いてないからな」
 あの男は知っているだろうが、教えないと言った。
 教えられないと。
 与えられた僅かのヒントを元に、大陸を彷徨うしかないだろう。
 ルベアは立ち上がるとレインの傍らで膝をつき、意識を失った彼を抱え上げた。
 普段鍛えている彼からすれば、レインの身体は軽い。
 丈夫なのは知っているが、下手に力を入れると折れてしまいそうだ。
 ベッドに運んで寝かせてやる。
 顔色が少し悪いが、呼吸は乱れていない。
 振り返ると、ウェルが枕を持ってきた。
「何か、足りないものとかがあれば言ってください。出来る限り用意させましょう」
 ルベアはオルカーンに視線を合わせ、特に無いのを確認するとウェルへと視線を戻した。
「いや。十分だ。礼を言う」
 軽く頭を下げると、ウェルは微笑んで、それではと言って退室した。

「さ、じゃあ俺たちも寝ようぜ。明日早いんだろ?」
 オルカーンが言ってもう一つのベッドに飛び乗る。
「……」
 無言でオルカーンを見ると、布団に潜り込みながら溜め息と共に言った。
「……レインは寝相悪いんだよ」
 ルベアは溜め息をつくと、オルカーンの横に寝転がった。
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