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2012/02/11 (Sat)
「……出来れば、こちらの準備が整ってから来て欲しかったところですが」
 言って二人はリィの傍に寄ると、それぞれの手を取った。

「リィゼンセディア」

 二人の声が重なる。

 ルシェイドがゆっくりとリィを降ろす。
 二人に手を取られてリィは立ち上がり、そして目を開いた。
 薄い水色の瞳が、ルベア達を捉えて微笑む。
 並んで見るとよくわかるが、三人とも酷く似ていた。
 違うのは雰囲気と瞳の色だけのようだ。

「ようこそ、イーアリーサへ。僕がこの町の長をしています、リィゼンセディアといいます」
 先程ルシェイドに抱えられていた時と違う、凛とした表情と声だった。
 ルシェイドが回りを見渡してから言う。
「僕も居ていいかい?」
「良いですよ」
 ウェルが答え、リィが微笑む。
 対照的に、ラナは渋い顔だ。
「ではこちらへどうぞ」
 全員を隣室へと誘う。
 ほんの少しリィがふらついたが、それは直ぐ横にいたラナが支えた。
 皆の後について隣室へ入る。
 其処は淡い光に照らされた応接室のようだった。
 中央にテーブルとソファが有り、壁際では暖炉が据えられている。
 火は灯っていない。
 と思っていたら、不意に音を立てて火がついた。
 ぱちぱちと、木の爆ぜる音が聞こえる。

 各々がソファに座ると、リィが口火を切った。
「さて、皆さんが此処にきた目的ですが、……シェンディルに会いたい、ということでしたね?」
 ルベアがレインとオルカーンを一瞥し、頷く。
 リィは少しの間躊躇った後、レインに視線を合わせて言った。
「残念ながら、シェンディルは居ません」
「え」
「何故だ」
 驚くレインの横でルベアが低く問う。
「彼女は今聖山に居ます」
 きっぱりと。
 言い切られた言葉に驚いた顔をしたのはルベア達だ。
「……聖山?」
「まさか……」
 小声で囁き交わす言葉の端を捉え、リィが不思議そうに首を傾げた。
 町に居るはずの者が聖山に居ると聞かされて驚いているのかと思ったが、どうやら少し違うらしい。

「……あぁ、そういやディリクが何か言ってたけど、それで驚いてるのかな?」
 何気なく、という感じでルシェイドが言うと、レインが明らかに顔を強張らせた。
「……珍しく忙しそうだったから、手伝おうかと思ったら材料調達を頼んだって話を聞いてね。その関係かなと思ったんだけど……当たりのようだね」
 苦笑して皆の顔を見渡す。
 ルベアの刺すような視線が痛い。

「彼女が聖山に行った事に、ルシェイドは関係ありませんよ」
 見かねたのか、ウェルが口を挟む。
「別に、死んでるわけじゃないんだろ?」
 苦味の混じる声でオルカーンが問う。
 ウェル達は驚いたように顔を見合わせた。
「いえ、死んではいません。ただ、用事があって出かけているだけですよ」
「それなら、良い」
 そう言って、オルカーンは顔を伏せた。
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