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2012/02/11 (Sat)
 町からでも聖山が見える。
 近いわけではない。
 それほど大きく、標高が高いということだ。
「見えるから案内はいらないと思うが、一つだけ」
 町境についたときにそう前置きして、ラナは山の右手側を指差した。
「行くのなら向こうへ迂回すると良い。遠回りに思えるだろうが直進するより早い」
「……分かった」
 礼を言って町から出る。

 途端に冷気が全身を襲った。
「わー寒いー」
 間の抜けた声でレインが感想を言う。
 苦笑しながら振り返ると、其処には既にラナの姿はなかった。
「もう行ったのか。早いなぁ」
 オルカーンが感心したように鼻を鳴らす。
「ねぇ行こうよー。このまま此処に立ってたら雪だるまになっちゃうよ」
 情けない声で言われ、ルベアは荷物を担ぎなおした。

 道のりは特に迷うこともなく進めた。
 誰かが踏み固めたのだろう獣道が、視界から消えることなくあったからだ。
「山へ行く人とか結構いるのかなぁ?」
「どうだろうなぁ。最近人が通った形跡は無いよ」
 顔を低くして地面を見ていたオルカーンが応えた。
 その答えに、レインが首を傾げる。
「シェンディルが通ったんじゃないのかな?」
「通らなかったんじゃないか?」
 言いながら進んでいくうちに、周囲の木々が鬱蒼としてきた。
 自分達三人以外の息遣いが、徐々に増えていく。
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