小説用倉庫。
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「見つけた」
不意に、オルカーンが声を上げた。
視線は前方を向いたまま。
否。
ある一点を、凝視している。
「何処だ」
「此処から真っ直ぐ、少し開けたところが見えるだろ? あの辺だ」
見ると、山の中腹辺りに木々の緑ではない場所があった。
多分其処がオルカーンの言う場所だろう。
「よし。じゃあ行くぞ……って何やってるんだレイン」
荷物を担ぎなおし、レインを振り返ると、彼はオルカーンの尻尾をじっと見ていた。
「何でオルカーンの尻尾っていつもふかふかなんだろー」
「……いいから行くぞ」
出鼻を挫かれた気分で、レインの首根っこを掴む。
半ば引き摺って歩き始めると、観念したのかレインもきちんと歩き出した。
「動く様子は?」
「今の所無いなぁ。寝てるのか動けないのか」
そうか、と言いかけて眉をひそめる。
「……動けない?」
「かも、ってこと。何もいないわけじゃないだろ? 此処って」
聖山は他に比べて魔物や魔獣の出現率は低い。
だが低いだけであって、出ないわけではなかった。
ただ、周りに注意をしていれば遭遇は防げるほどの小物ばかりなので、大して警戒はしていなかった。
「……でかいのがいるかもしれないってことか……」
憮然とした顔で呟く。
戦うことは嫌いではない。
時間に制限が無いのなら。
「とにかく急ごう」
二人を急かし、ルベアは歩を早めた。
オルカーンの言う場所に着いた時には、もはや日は暮れかかっていた。
「此処か?」
「うん……」
オルカーンの返事は歯切れが悪い。
何だ、と思ってみると、オルカーンは顔を上げて遠くを見ていた。
否、実際には見ていないのかもしれない。
何を。
見ているのか。
レインは歩きつかれたのか、近くの木にもたれかかって座り込んでいる。
周囲に視線を走らせながら、ルベアはオルカーンの次の言葉を待った。
「こっちだ」
短く言って、鼻先を右へと向けた。
周囲は既に薄暗くなり、視界があまり利かなくなって来ている。
視線を向けた先は木々が壁のようで、幹の間に僅かに覗く奥は闇に覆われていた。
「動けないわけではなさそうだな」
「特に怪我はしてなさそうだけど……」
「レイン、動けるか?」
振り返ると、レインは木の根元に丸くなって眠っていた。
呆れて起こそうとすると、オルカーンが遮った。
「動きはゆっくりだし、そう遠くまで行く気はなさそうだから、今は少し休もう。無理してもレインが動けなかったら意味無いんだし」
ルベアは僅かの逡巡の後、溜め息と共に頷いた。
「仕方ない。それならレインが起きたら行くことにしよう」
不意に、オルカーンが声を上げた。
視線は前方を向いたまま。
否。
ある一点を、凝視している。
「何処だ」
「此処から真っ直ぐ、少し開けたところが見えるだろ? あの辺だ」
見ると、山の中腹辺りに木々の緑ではない場所があった。
多分其処がオルカーンの言う場所だろう。
「よし。じゃあ行くぞ……って何やってるんだレイン」
荷物を担ぎなおし、レインを振り返ると、彼はオルカーンの尻尾をじっと見ていた。
「何でオルカーンの尻尾っていつもふかふかなんだろー」
「……いいから行くぞ」
出鼻を挫かれた気分で、レインの首根っこを掴む。
半ば引き摺って歩き始めると、観念したのかレインもきちんと歩き出した。
「動く様子は?」
「今の所無いなぁ。寝てるのか動けないのか」
そうか、と言いかけて眉をひそめる。
「……動けない?」
「かも、ってこと。何もいないわけじゃないだろ? 此処って」
聖山は他に比べて魔物や魔獣の出現率は低い。
だが低いだけであって、出ないわけではなかった。
ただ、周りに注意をしていれば遭遇は防げるほどの小物ばかりなので、大して警戒はしていなかった。
「……でかいのがいるかもしれないってことか……」
憮然とした顔で呟く。
戦うことは嫌いではない。
時間に制限が無いのなら。
「とにかく急ごう」
二人を急かし、ルベアは歩を早めた。
オルカーンの言う場所に着いた時には、もはや日は暮れかかっていた。
「此処か?」
「うん……」
オルカーンの返事は歯切れが悪い。
何だ、と思ってみると、オルカーンは顔を上げて遠くを見ていた。
否、実際には見ていないのかもしれない。
何を。
見ているのか。
レインは歩きつかれたのか、近くの木にもたれかかって座り込んでいる。
周囲に視線を走らせながら、ルベアはオルカーンの次の言葉を待った。
「こっちだ」
短く言って、鼻先を右へと向けた。
周囲は既に薄暗くなり、視界があまり利かなくなって来ている。
視線を向けた先は木々が壁のようで、幹の間に僅かに覗く奥は闇に覆われていた。
「動けないわけではなさそうだな」
「特に怪我はしてなさそうだけど……」
「レイン、動けるか?」
振り返ると、レインは木の根元に丸くなって眠っていた。
呆れて起こそうとすると、オルカーンが遮った。
「動きはゆっくりだし、そう遠くまで行く気はなさそうだから、今は少し休もう。無理してもレインが動けなかったら意味無いんだし」
ルベアは僅かの逡巡の後、溜め息と共に頷いた。
「仕方ない。それならレインが起きたら行くことにしよう」
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