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2012/03/21 (Wed)
「何やってんの二人とも。こんな所で」
 言いかけたアィルの言葉にかぶさるように、第三者の声が響いた。
 二人でそちらを向くと、オルカーンが建物の影から出てきたところだった。
「何って……見ればわかるだろう」
「剣の相手をしてもらってたんだよ」
 答えながら、アィルはちらりとルベアを伺った。
 先程の暗い光は見えない。
 そのことに少し緊張を緩め、オルカーンの方へ歩み寄る。

 ルベアはそんなアィルの様子に気づいてはいたが、特に何かしようとは思わなかった。
 仇討ちで、強くなろうとしたのは事実だ。
 果たせようと果たせまいと、それは変わらない。
 表情にこそあまり出さないが、ルベアは倦怠感を覚えていた。
 身体が重い。
 疲れているのだろうか。
 二人に気づかれないように溜め息を吐く。
 疲れたとは言っていられない。
 レインが倒れたままだし、何も終わっていないのだから。

 オルカーンが怪訝そうにルベアを見て首を傾げた。
「どうかした?」
「……いや?」
 首を傾げながら返すと、オルカーンは納得していないような顔で口を噤んだ。
「そろそろかな」
 アィルが呟く。
 日はかなり高くなってきていた。
 様子を見てくる、と言い置いて、アィルが家へと戻っていった。
「俺たちも行くか。……出発の準備は出来ているのか?」
「俺は荷物持ってないよ」
 それもそうかと思い、ルベアも家へと向かう。
 その後をオルカーンが躊躇いがちについていった。

 中へ入ると、丁度ヴィオルウスが降りてきたところだった。
 心なしか顔色が悪い。
 彼はルベアを見つけると一瞬身体を強張らせ、直ぐに吐息と共に言葉を吐き出した。
「こっちの準備は出来たよ。……アィルは?」
 怪訝そうに問われ、首を傾げる。
 ルベアたちより先に家に入っているはずだ。
「奥の部屋じゃないか?」
 視線を奥へとやりながら言うと、それを見計らったかのように扉が開き、アィルが顔を見せた。
 布の塊を大事そうに抱えている。
「あぁ、アィル。準備できたよ」
「俺の方も完成だ」
「じゃあすぐ行く?」
 首を傾げながら、ヴィオルウスが皆を見回す。
 皆が頷くと、二階に、と言って階段を上がった。
 彼が使っていない部屋に入るのを見て、ルベアは自分たちの荷物を取りに行った為に、遅れて部屋に入る。
 部屋の中は、床と天井に魔方陣が描かれていた。
「落ちんのかこれ」
「実際に描いてあるわけじゃないから大丈夫だよ。発動すれば消えるから」
「へぇ」
 アィルが興味深そうに陣を覗き込む。
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