忍者ブログ
小説用倉庫。
HOME 285  286  287  288  289  290  291  292  293  294  295 
2024/11/22 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2012/03/21 (Wed)
「設定はエールの裏路地。ディリクの店の近くにしたんだけど……」
 良いかな? と伺うように見られ、ルベアは頷いた。
「もとより其処に行く予定だ。問題はない」
「じゃあ行こう。用意は良い?」
 皆が一様に頷く。
 全員側の中に入ったのを確認して、ヴィオルウスは両手を翳した。

 淡く光が灯る。
 それは陣の内側に溢れ、視界を白く覆い尽くした。
 視界が利かなくなったとき、落ちるような浮遊感に包まれた。
 ぐらりと傾ぐ。
 ルベアは眩暈がして目を閉じ、荷物を握り締めた。

 不意に、空気が変わった。
 家の中の、木の匂いではない。
 乾いた砂と、土の匂い。
 目を開けると薄暗い路地だった。
 移動したのだ、と分かったのは、そこが見覚えのある場所だったからだ。
 ディリクの店と、表通りの丁度中間あたりの場所だ。
 空気の抜けるような音が聞こえたのでそちらを見ると、ぽかんとした表情でオルカーンが周りを見ていた。
 その左右にアィルとヴィオルウスが立っている。
 全員無事のようだ。

「行こう」
 促して、歩き出す。
 狭い路地に足音が響いた。
 程なく、古びた扉の前に来た。
 前に来た時と変わらない、店とは思えない扉だ。
 押し開けると、中の闇が押出されるかのようだった。
 相変わらず暗い。
 躊躇することなく扉からの明かりを頼りに進むと、カウンターに明かりが灯った。
 赤い火がちらつく。
「……来たか」
 ディリクが、カンテラを手に立っていた。
 扉が完全に閉まると、明かりは目の前の火だけになった。
「相変わらず商売できなさそうな店だよな」
 呆れたようにアィルが呟く。
 ディリクは片目を眇めてアィルを見ると、口を開いた。
「託さず持ってきたのか」
「あぁ。丁度町にも用事があったから、ついでにと思って」
 そう言ってアィルは手に持った包みをディリクへと渡した。
 にやりと笑って付け足す。
「あとヴィオルウスの弟ってやつも見てみたかった」
「……」
 ディリクは特に何も言わずに踵を返すと、奥へと向かった。
 少し進んで振り返る。
「少し待て」
 低く囁き、ディリクは奥の部屋へと消えた。
 カウンターの上にはカンテラが乗っている。
 その明かりを頼りに店内を見回すが、相変わらず用途はよくわからなかった。

「レインとは、何時会ったの?」
 唐突に、ヴィオルウスが問うた。
 一瞬考え、オルカーンへと視線を移す。
「いつだ?」
「……えっ」
 突然振られたオルカーンは驚いたように尻尾を立てた。
「何で俺に聞くの」
「拾ってきたのはお前だろ」
「……拾った?」
 アィルが怪訝そうに問う。
「こいつが拾ってきたんだ」
「あー……何か気になって行ったら倒れてたんだよ。……いつだったかなぁ。そんなに前じゃないよ」
「そう……」
 ヴィオルウスは考え込むように視線を落とした。

 何故聞くのかと問おうと口を開いた時、奥の扉が開いた。
Comment
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Password
HOME 285  286  287  288  289  290  291  292  293  294  295 
HOME
Copyright(C)2001-2012 Nishi.All right reserved.
倉庫
管理者:西(逆凪)、または沖縞

文章の無断転載及び複製は禁止。
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
[長編] Reparationem damni  (03/12)
[長編] Reparationem damni  (03/12)
[長編] Reparationem damni  (10/19)
[長編] Reparationem damni  (10/19)
[長編] Reparationem damni  (09/07)
忍者ブログ [PR]
PR