小説用倉庫。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「設定はエールの裏路地。ディリクの店の近くにしたんだけど……」
良いかな? と伺うように見られ、ルベアは頷いた。
「もとより其処に行く予定だ。問題はない」
「じゃあ行こう。用意は良い?」
皆が一様に頷く。
全員側の中に入ったのを確認して、ヴィオルウスは両手を翳した。
淡く光が灯る。
それは陣の内側に溢れ、視界を白く覆い尽くした。
視界が利かなくなったとき、落ちるような浮遊感に包まれた。
ぐらりと傾ぐ。
ルベアは眩暈がして目を閉じ、荷物を握り締めた。
不意に、空気が変わった。
家の中の、木の匂いではない。
乾いた砂と、土の匂い。
目を開けると薄暗い路地だった。
移動したのだ、と分かったのは、そこが見覚えのある場所だったからだ。
ディリクの店と、表通りの丁度中間あたりの場所だ。
空気の抜けるような音が聞こえたのでそちらを見ると、ぽかんとした表情でオルカーンが周りを見ていた。
その左右にアィルとヴィオルウスが立っている。
全員無事のようだ。
「行こう」
促して、歩き出す。
狭い路地に足音が響いた。
程なく、古びた扉の前に来た。
前に来た時と変わらない、店とは思えない扉だ。
押し開けると、中の闇が押出されるかのようだった。
相変わらず暗い。
躊躇することなく扉からの明かりを頼りに進むと、カウンターに明かりが灯った。
赤い火がちらつく。
「……来たか」
ディリクが、カンテラを手に立っていた。
扉が完全に閉まると、明かりは目の前の火だけになった。
「相変わらず商売できなさそうな店だよな」
呆れたようにアィルが呟く。
ディリクは片目を眇めてアィルを見ると、口を開いた。
「託さず持ってきたのか」
「あぁ。丁度町にも用事があったから、ついでにと思って」
そう言ってアィルは手に持った包みをディリクへと渡した。
にやりと笑って付け足す。
「あとヴィオルウスの弟ってやつも見てみたかった」
「……」
ディリクは特に何も言わずに踵を返すと、奥へと向かった。
少し進んで振り返る。
「少し待て」
低く囁き、ディリクは奥の部屋へと消えた。
カウンターの上にはカンテラが乗っている。
その明かりを頼りに店内を見回すが、相変わらず用途はよくわからなかった。
「レインとは、何時会ったの?」
唐突に、ヴィオルウスが問うた。
一瞬考え、オルカーンへと視線を移す。
「いつだ?」
「……えっ」
突然振られたオルカーンは驚いたように尻尾を立てた。
「何で俺に聞くの」
「拾ってきたのはお前だろ」
「……拾った?」
アィルが怪訝そうに問う。
「こいつが拾ってきたんだ」
「あー……何か気になって行ったら倒れてたんだよ。……いつだったかなぁ。そんなに前じゃないよ」
「そう……」
ヴィオルウスは考え込むように視線を落とした。
何故聞くのかと問おうと口を開いた時、奥の扉が開いた。
良いかな? と伺うように見られ、ルベアは頷いた。
「もとより其処に行く予定だ。問題はない」
「じゃあ行こう。用意は良い?」
皆が一様に頷く。
全員側の中に入ったのを確認して、ヴィオルウスは両手を翳した。
淡く光が灯る。
それは陣の内側に溢れ、視界を白く覆い尽くした。
視界が利かなくなったとき、落ちるような浮遊感に包まれた。
ぐらりと傾ぐ。
ルベアは眩暈がして目を閉じ、荷物を握り締めた。
不意に、空気が変わった。
家の中の、木の匂いではない。
乾いた砂と、土の匂い。
目を開けると薄暗い路地だった。
移動したのだ、と分かったのは、そこが見覚えのある場所だったからだ。
ディリクの店と、表通りの丁度中間あたりの場所だ。
空気の抜けるような音が聞こえたのでそちらを見ると、ぽかんとした表情でオルカーンが周りを見ていた。
その左右にアィルとヴィオルウスが立っている。
全員無事のようだ。
「行こう」
促して、歩き出す。
狭い路地に足音が響いた。
程なく、古びた扉の前に来た。
前に来た時と変わらない、店とは思えない扉だ。
押し開けると、中の闇が押出されるかのようだった。
相変わらず暗い。
躊躇することなく扉からの明かりを頼りに進むと、カウンターに明かりが灯った。
赤い火がちらつく。
「……来たか」
ディリクが、カンテラを手に立っていた。
扉が完全に閉まると、明かりは目の前の火だけになった。
「相変わらず商売できなさそうな店だよな」
呆れたようにアィルが呟く。
ディリクは片目を眇めてアィルを見ると、口を開いた。
「託さず持ってきたのか」
「あぁ。丁度町にも用事があったから、ついでにと思って」
そう言ってアィルは手に持った包みをディリクへと渡した。
にやりと笑って付け足す。
「あとヴィオルウスの弟ってやつも見てみたかった」
「……」
ディリクは特に何も言わずに踵を返すと、奥へと向かった。
少し進んで振り返る。
「少し待て」
低く囁き、ディリクは奥の部屋へと消えた。
カウンターの上にはカンテラが乗っている。
その明かりを頼りに店内を見回すが、相変わらず用途はよくわからなかった。
「レインとは、何時会ったの?」
唐突に、ヴィオルウスが問うた。
一瞬考え、オルカーンへと視線を移す。
「いつだ?」
「……えっ」
突然振られたオルカーンは驚いたように尻尾を立てた。
「何で俺に聞くの」
「拾ってきたのはお前だろ」
「……拾った?」
アィルが怪訝そうに問う。
「こいつが拾ってきたんだ」
「あー……何か気になって行ったら倒れてたんだよ。……いつだったかなぁ。そんなに前じゃないよ」
「そう……」
ヴィオルウスは考え込むように視線を落とした。
何故聞くのかと問おうと口を開いた時、奥の扉が開いた。
Comment
倉庫
管理者:西(逆凪)、または沖縞
文章の無断転載及び複製は禁止。
文章の無断転載及び複製は禁止。
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
カテゴリー
- ご挨拶。(3)
- [長編] Reparationem damni(12)
- [長編] Nocte repono rubei(72)
- [長編] Sinister ocularis vulnus (30)
- [長編] Lux regnum(61)
- [長編] Pirata insula(47)
- [長編] Purpura discipulus(43)
- [長編] Quinque lapidem(29)
- [短編] Canticum Dei(3)
- [短編] Candidus Penna(9)
- [短編] Dignitate viveret,Mori dignitas (11)
- [短編] Praefiscine(3)