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2012/03/28 (Wed)
「来い」
 出てきたディリクは短く一言告げると、左の部屋へ消えた。
 呆れたような表情をしながら、アィルがディリクの後を追う。
 それに習って、皆移動した。
 明かりは必要ないかと思いつつ、持っていく。
 部屋の中に入ると、一瞬光が走った。
 強い光に目が眩むが、それは直ぐに消え、室内はやはり薄暗い状態にあった。
 部屋の中央にはレインがいた。
 ぼんやりと上体を起こしている。
 その向うにディリクが立っていた。

「……レイン?」
 オルカーンが不安そうに問う。
 声にぴくりと反応して、レインがのろのろとこちらを振り返った。
 何処か夢見がちな表情だ。
 焦点が定まっていない。

「起こせ」
 ディリクが一言、囁いた。

 起きていない、ということなのだろうか。
「レイン」
 呼びかけ、肩に手をかけようと手を伸ばす。
 途端、ばちりと火花が散って手が弾かれた。
 驚いてレインを見、次いでディリクへと視線を投げる。
 彼は一つ頷くと、懐から何かを取り出し、レインの上に振りかけた。
 一見砂のようだったが、僅かな明かりに反射してきらきらと光っている。
 それは真っ直ぐには落ちず、レインの周囲を漂うかのように舞い、弾けた。
 レインがゆっくりと瞬く。
「レイン」
 もう一度呼びかける。
 口が開く。
 言葉を出そうとして、戸惑っているかのようにまた閉ざされた。
 思わずディリクを振り仰ぐと、彼は小声で何かを唱えていた。
 苦痛を感じたかのようにレインが顔をゆがめる。
 オルカーンがそろりと近寄り、レインの手を舐めた。
 労わるように。
 レインが手元に視線を落とす。
「……オルカーン?」
 まだ覚醒しきらないかのようなぼんやりとした声だったが、レインはちゃんとこちらが分かるようだった。
 ふ、とディリクが軽く息を吐く。
 レインは視線を上げるとルベアを見て、首を傾げた。
「ルベア? ……何処此処」
 答えようと口を開いた時、レインは目を閉じて後ろに倒れた。
 床に触れる寸前で、ディリクが支える。
 半ば呆然としながら、ディリクに視線を向けた。
「解毒できたんじゃないのか」
 ディリクはレインの首筋の脈を取ってから、ルベアへと顔を向けた。
「呼びかけには応えられた。解毒は成功している」
「じゃあ何で倒れたの」
 オルカーンが僅かに苛立った声で言う。
 尻尾が不安定にぱさりと揺れた。
「疲労だ。体力が回復していない」
 ディリクの返答はにべも無い。
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