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2012/03/19 (Mon)
「最近やってなかったから」
 そう言って、アィルは苦笑しながら剣を構えた。
 付き合うとはこれのことか、とルベアも剣を構えた。

 場所は家の裏。
 少し開けた場所だ。

「あんた強いから、ちゃんと手合わせしてみたかったんだ」
 一旦眼を伏せ、開いた時、アィルの表情は真剣なものに変わっていた。
 空気が張り詰めたものになる。
 心地よい緊張感を感じながら、ルベアは切っ先をアィルへと固定した。
 息を吸い、吐く。
 短く息を吐いて、アィルが走り出す。
 ルベアはむしろ悠然とそれを迎えた。
 突き出される刃を受け流す。
 甲高い音が、裏庭に響き渡る。
「闇雲に切り掛かったところで当たりはしないぞ」
 ルベアが静かに告げると、アィルが剣の軌道を変えた。
 突きが横薙ぎの一撃に変化する。
 だが軽く上げた刃で、アィルの剣は阻まれた。
 刃を滑らせるように回転させ、剣を絡めとる。
「あ……!」
 そのままアィルの手から弾き飛ばすと、驚きの声を上げ、剣の落ちた先へと視線を送った。
 その喉元に、ルベアが切っ先を突きつけた。
 アィルの動きが完全に止まる。
「立会いの最中に余所見をするな。死にたいのか」
 低い声で囁く。
 アィルの肩が小さく震える。
 眼に微かに恐怖の色が宿ったのを見て、ルベアは剣を引いた。
 途端、アィルが深く息を吐き出す。

「終わりか?」
 静かに問うと、アィルは表情を引き締めて短く叫んだ。
「もう一回!」
「……良いだろう」
 にやりと笑ってルベアが頷く。
 落ちた剣を拾い、アィルが元の位置に戻る。
 仕切りなおしだ。
 今度はルベアから打ち込んだ。
 何合か細かく打ち込む。
 それらを受けながら、アィルが一歩下がった。
 その瞬間、ルベアは大きく打ち込む。
 予想したのか誘ったのか、振り下ろされた刃を自らの剣で打ち払い、刃に沿わすように跳ね上げる。
 ルベアは迫る刃を落ち着いた表情で眺め、回転しながら避ける。
 その動きに合わせて剣を抜き、アィルへと振り下ろす。
「……!」
 動きの予想はしていなかったのか、アィルが大げさにのけぞった。
 更に胴への斬撃を放つと、それをかろうじて受けたアィルが体勢を崩す。
 畳み掛けるように斬りかかる。
 五合まで受けたところで、アィルがバランスを崩して倒れた。
「……ッ……!」
 アィルが肩で息をしながらルベアを見上げる。
 ルベアは息を乱してすらいない。
 暫く見詰め合った後、アィルが項垂れて息を吐いた。
「……はぁ、強いなぁ」
「俺だって最初から強かったわけじゃない」
 片眉をあげて剣を鞘へと戻し、アィルに手を差し伸べる。
 それに縋りながら立ち上がり、アィルも鞘に収めた。
「強くならなきゃいけない、理由があったからな」
 暗い目で呟いたルベアに、アィルがぎくりと身を竦ませる。
「あの……」
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