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2012/03/16 (Fri)
「あー、あのさ」
 沈黙に耐え切れずに、オルカーンが声を上げた。
 ルベアとヴィオルウスが顔を上げ、こちらを見てくる。
「……えぇと、レインって知ってる?」
 特に何の言葉も用意していなかったオルカーンは、ついそう聞いていた。
 見た目で言うなら血縁者なんだけど、と思いながら。

「……知ってる。彼は私の弟だから」
 ヴィオルウスはあっさりとオルカーンの思いを肯定した。
「彼が何処にいるのか、知ってるの?」
 紫の眼で静かに見つめられ、オルカーンはまごつきながらエールにいる、と答えた。
「エールに? そんな、ところに……」
 半ば呆然と、呟く。
「……お前……」
 ルベアが口を開く。
 その声に、ヴィオルウスとオルカーンがそちらを向く。

 眉を顰めながら、彼は囁いた。
「お前が、レインの記憶を消したのか?」
 思い出されるのはシェンディルの言葉。
 似た魔力。

 だが、ヴィオルウスは緩くかぶりを振ると、違う、と言った。
「私じゃない。記憶が無いのは、知らなかった。……だから戻ってこなかったのか」
 最後の言葉は誰に言うとも無く、ただ流れた。
「何があったんだ?」
 ヴィオルウスは答えようと口を開きかけ、間を置いて直ぐに閉じた。
「……本人に言う。彼が良いと言うなら、彼に聞けば良い」
 不意にヴィオルウスは顔を上げると、そのまま立ち上がった。
「そろそろ帰らないと」
 そう言って荷物を手に取り、促すようにルベア達を見て首を傾げる。

 確かにずっとこのまま座っていても仕方が無い。
 ルベアは立ち上がり、思い出したように聞いた。
「そういえば、魔界へ渡るにはお前に頼めば良いと聞いた。移動の手段があるのか」
「扉が作れる。私は魔族だから」
 あっさりと答え、踵を返す。
「……ってことは、レインも?」
 後を追いながら、オルカーンが混乱したような声を出した。
 ヴィオルウスは肩越しに振り返ると、少し首を傾げる。
「半分だけだけど」
 あまり言いたくない話なのか、ヴィオルウスは視線を前に戻すと歩き出した。
 後を追おうとして、オルカーンは足を止める。
「ねぇ、家ってそっちじゃないよ」
 ヴィオルウスはきょとんとして振り返ると、オルカーンに首を傾げてみせた。
「そうなの?」
「こっちだよ」
 オルカーンが呆れたように言って歩き出す。
 ヴィオルウスが行こうとしていた方向より、右寄りだ。
 早くも翳り始めた森の中を、三人は黙って歩きつづけた。
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