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2012/03/16 (Fri)
「……アィル!」
「ルベアッ!」
 制止する声を振り切って、剣は突き刺さった。
 アィルの顔の真横、髪一筋ほどの距離に。

「なん……で……」
 アィルが息を乱しながら、呆然と見上げてくる。

 突き立てた剣を抜くと、汚れを払って鞘に収めた。
「別に。殺したいのはお前じゃないし、お前に今死なれる訳にはいかないからな」
 振り向いた視線の先には、ヴィオルウスがいる。
 そしてその向うにオルカーンが。
「何やってんだよ、ルベア!」
 走り寄るオルカーンを一瞥すると、ルベアは意地悪く言った。
「お前は知ってるはずだぞ。俺が何をしているのかは」
「え、アィルが敵?」
「違う。そっちだ」
 言って指を指すと、オルカーンはそちらを見て視線を戻し、またそちらを見た。
「……え、この気の弱そうな人が、町を滅ぼしたの?」
 その言葉に吹き出す声が聞こえ、そちらに視線をやるとアィルが地面に上半身を起こして肩を震わせていた。
 ヴィオルウスは困ったように立ち竦んだままだ。
「敵討ちは、止めたの?」
 オルカーンに静かに言われ、ルベアは視線をヴィオルウスに向けた。
「正直今でも殺したいが」
 その言葉にアィルが慌てて立ち上がる。

 ルベアは静かに視線をアィルに向け、小声で呟いた。
「あの家に、一人は寂しいだろう」

 それは本当に小さな声で、耳の良いオルカーンと近くに来ていたアィルにしか聞こえなかった。
 一瞬泣きそうな顔になったアィルは、直ぐに表情を改めてルベアに向き直った。
「じゃあ、殺さないでくれるんだな?」
 ルベアは少しの間を置いて、にやりと笑った。
「今の所はな」
「そういう意地悪いこと言うなよ」
 オルカーンがぼそりと口を挟む。
「生涯かけて殺そうとしてたのを諦めるんだ。そのくらい良いだろうが」

「なぁ、えぇと、ルベアってのか?」
 アィルが躊躇いがちに声をかける。
「あぁ」
「さっきの……皆死んだってことはナーダの出身か」
「……あぁ」
「……そっか。俺も似たような境遇だけど、あんたが止めてくれて嬉しいよ」
 そう言って顔をほころばせた。
 ふとルベアが眉を寄せる。
「似たような?」
「あー、シオンの村、こいつ半分滅ぼしたんだよ」
 アィルはヴィオルウスを指差し、あっさりと言い切った。
「だから村に人って少なかったろ?」
「あーそう言われれば確かに」
 納得したようにオルカーンが頷く。
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