小説用倉庫。
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明るい外から中へ入ると、殆ど真っ暗に感じられて暫く見えなかった。
少し待つと扉が開いているのが見え、皆でそちらに移動した。
「……」
小さく、囁く声が聞こえる。
内容は良く聞こえない。
ディリクとレインが話をしているのだということは分かったので、室内に足を踏み入れる。
「何でオレ此処にいるの?」
訝しげなレインの声。
見ると、ベッドの上に上半身を起こしていた。
その傍らに、ディリクが立っている。
「毒の治療だ」
「毒?」
いまいち分かっていないレインの言葉に脱力感を覚えつつ、ディリクの傍らに近寄った。
「あ、ルベアー。どうかしたの?」
「……あのな。貴葉石樹の毒にやられたから此処まで運んだんだ」
「そうだったんだ。……そっちの人は?」
変わったところは無い。
いつもの彼だ。
そのレインは、首を傾げてルベアの後ろを見ていた。
「思い出せない?」
ヴィオルウスが静かに問う。
そのままの姿勢で、レインが遠い目になる。
「覚えて、無い」
難しい顔でレインが俯く。
「……本人連れてきた方が良いんじゃね?」
アィルがぼそりと呟いた。
「連れてきても治せるかどうか……ってアィル知ってたの?」
「居たから」
小声で囁かれる会話を、レインが遮った。
「もしかしてオレの血縁者とか?」
「……何故?」
慎重に、ヴィオルウスが聞く。
「んー、なんとなく。あと、似てるかなぁと思って」
そう言って、レインは自分の髪を摘んで見せた。
「ルベア探し出せたんだね」
「……成り行きでな」
舌打ちしたい衝動を堪えつつ答える。
「探してたの?」
質問の矛先がルベアに来た。
「……あぁ。ルシェイドに言われてな」
「ルシェイドに、会ったのか?」
唐突に、それまで黙って控えていたディリクが口を開いた。
口調にただならぬものを感じ、気圧されながら頷く。
「何時だ」
「イーアリーサで、だから十日ほど前だな」
「……そうか」
嘆息して、視線を落とすディリクに声をかけようとして口を開く。
「オレ記憶無いんだけど戻せるの?」
だが、それはレインによって遮られた。
気にしつつ、視線をヴィオルウスへ向ける。
彼は少し戸惑っているように見返していた。
「出来ないの?」
レインが不安そうに問う。
「ルシェイドは、何て言ってたの?」
質問には答えず、ヴィオルウスは逆に問い返した。
「オレが心から望み、オレの関係者がそれを許せば戻るって」
「……やっぱり」
ヴィオルウスが呟く。
レインが眉を寄せた。
「何が?」
「……記憶とか、そういう繊細な魔法に長けているのは貴方なんだよ。レイン」
僅かに眉を寄せ、ヴィオルウスがレインを見つめる。
「グラディウスは緻密な構成が出来ないし、私は、……破壊する方だから」
最後は少し自嘲気味に。
咎めるような眼差しで、アィルがヴィオルウスを一瞥する。
「そっか。じゃあどうすればいいんだろ」
うーん、と考え込むように腕組みをして、レインが視線を落とす。
オルカーンは成り行きを見守りながら、尻尾をぱたりと振った。
ひょい、と顔を上げ、レインが首を傾げた。
「オレが記憶戻す術を知ってて、でも記憶がないから分からないってことかー。……関係者って、貴方だよね?」
レインがヴィオルウスに問う。
「……血縁者では、あるよ」
「許すって、どういう……事……」
語尾が掠れた。
目は驚愕に見開かれている。
その視線が自分に向いていることに気づいて、ルベアは怪訝そうに首をかしげた。
「どうし……」
言葉は最後まで言えなかった。
闇が、周囲を飲み込むように足元から広がっていく。
驚愕の面持ちで、その場の全員が振り向く。
「――ルベアッ!」
常には聞いたこともないようなレインの叫び声を最後に、視界は闇に包まれた。
少し待つと扉が開いているのが見え、皆でそちらに移動した。
「……」
小さく、囁く声が聞こえる。
内容は良く聞こえない。
ディリクとレインが話をしているのだということは分かったので、室内に足を踏み入れる。
「何でオレ此処にいるの?」
訝しげなレインの声。
見ると、ベッドの上に上半身を起こしていた。
その傍らに、ディリクが立っている。
「毒の治療だ」
「毒?」
いまいち分かっていないレインの言葉に脱力感を覚えつつ、ディリクの傍らに近寄った。
「あ、ルベアー。どうかしたの?」
「……あのな。貴葉石樹の毒にやられたから此処まで運んだんだ」
「そうだったんだ。……そっちの人は?」
変わったところは無い。
いつもの彼だ。
そのレインは、首を傾げてルベアの後ろを見ていた。
「思い出せない?」
ヴィオルウスが静かに問う。
そのままの姿勢で、レインが遠い目になる。
「覚えて、無い」
難しい顔でレインが俯く。
「……本人連れてきた方が良いんじゃね?」
アィルがぼそりと呟いた。
「連れてきても治せるかどうか……ってアィル知ってたの?」
「居たから」
小声で囁かれる会話を、レインが遮った。
「もしかしてオレの血縁者とか?」
「……何故?」
慎重に、ヴィオルウスが聞く。
「んー、なんとなく。あと、似てるかなぁと思って」
そう言って、レインは自分の髪を摘んで見せた。
「ルベア探し出せたんだね」
「……成り行きでな」
舌打ちしたい衝動を堪えつつ答える。
「探してたの?」
質問の矛先がルベアに来た。
「……あぁ。ルシェイドに言われてな」
「ルシェイドに、会ったのか?」
唐突に、それまで黙って控えていたディリクが口を開いた。
口調にただならぬものを感じ、気圧されながら頷く。
「何時だ」
「イーアリーサで、だから十日ほど前だな」
「……そうか」
嘆息して、視線を落とすディリクに声をかけようとして口を開く。
「オレ記憶無いんだけど戻せるの?」
だが、それはレインによって遮られた。
気にしつつ、視線をヴィオルウスへ向ける。
彼は少し戸惑っているように見返していた。
「出来ないの?」
レインが不安そうに問う。
「ルシェイドは、何て言ってたの?」
質問には答えず、ヴィオルウスは逆に問い返した。
「オレが心から望み、オレの関係者がそれを許せば戻るって」
「……やっぱり」
ヴィオルウスが呟く。
レインが眉を寄せた。
「何が?」
「……記憶とか、そういう繊細な魔法に長けているのは貴方なんだよ。レイン」
僅かに眉を寄せ、ヴィオルウスがレインを見つめる。
「グラディウスは緻密な構成が出来ないし、私は、……破壊する方だから」
最後は少し自嘲気味に。
咎めるような眼差しで、アィルがヴィオルウスを一瞥する。
「そっか。じゃあどうすればいいんだろ」
うーん、と考え込むように腕組みをして、レインが視線を落とす。
オルカーンは成り行きを見守りながら、尻尾をぱたりと振った。
ひょい、と顔を上げ、レインが首を傾げた。
「オレが記憶戻す術を知ってて、でも記憶がないから分からないってことかー。……関係者って、貴方だよね?」
レインがヴィオルウスに問う。
「……血縁者では、あるよ」
「許すって、どういう……事……」
語尾が掠れた。
目は驚愕に見開かれている。
その視線が自分に向いていることに気づいて、ルベアは怪訝そうに首をかしげた。
「どうし……」
言葉は最後まで言えなかった。
闇が、周囲を飲み込むように足元から広がっていく。
驚愕の面持ちで、その場の全員が振り向く。
「――ルベアッ!」
常には聞いたこともないようなレインの叫び声を最後に、視界は闇に包まれた。
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