小説用倉庫。
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その闇は、ルベアだけを飲み込んで跡形もなく消えた。
「……ッ」
転がるようにレインがベッドから抜け出て、後を追おうとする。
「……止めろ!」
止めたのは、ディリクだった。
前へ進もうとするレインの腕を掴み、それ以上の前進を防ぐ。
「離……」
「駄目だ」
容赦なく言い捨てる。
「今の……何だ?」
まだ呆然とした声で、アィルが呟いた。
レイン以外の視線が、ディリクに集まる。
彼は暫くの逡巡の後、一言言った。
「虚ろだ」
「聞いたことがない」
怪訝そうにアィルが言う。
「……虚ろなものを好み、喰らう。名前自体、まだはっきりとしていない。……暫く前に南の施設から出たやつだ」
その言葉に、ヴィオルウスとオルカーンが身体を強張らせた。
「あ、んなの……が?」
呆然とオルカーンが呟く。
「ルベア、は……?」
弱々しい声で、レインが囁く。
ディリクはそれには応えず、険しい表情でルベアが消えた跡を睨みつけていた。
ずるり、と闇が沈む。
見回してもあるのは暗闇ばかりで、踏みしめる感覚さえあやふやで、床すら消えてなくなったようだった。
何処が前かすらわからない。
ため息を吐きながら、歩を進めようと身体を動かす。
途端、ずしりと肩に重い衝撃があった。
「お前の虚は美味そうだなァ」
絡み付くような声が響く。
耳元、から。
「!?」
驚愕に身体ごと振り向きながら、剣を抜く。
くすくすと、笑い声が周囲に散った。
「俺はそんなものでは斬れないなァ」
声は反響しているかのように遠く、近く、場所が特定できない。
「誰だ」
鋭く周囲に問いかける。
一歩踏み出そうとして、違和感に気づく。
重い。
周囲の闇に圧し掛かられるように、身体が重く感じた。
構えた剣の切っ先が下がっていく。
気力が、削り取られていく。
がくりと膝を突いた。
重さに比例して、笑い声が大きくなっていっている。
何が。
これ程に重いのか。
「……く……」
ぎり、と歯をかみ締める。
それでも、重さは軽減されない。
ゆっくりと、身体が傾ぐ。
どこが床か分からない。
けれど。
ルベアはその場で、崩れるように倒れた。
その周囲から、闇がまるで生き物のように倒れた身体へと群がった。
ゆるく目を開いたまま、彼は投げ出された手が闇に飲まれて見えなくなっていくのを見ていた。
「……ッ」
転がるようにレインがベッドから抜け出て、後を追おうとする。
「……止めろ!」
止めたのは、ディリクだった。
前へ進もうとするレインの腕を掴み、それ以上の前進を防ぐ。
「離……」
「駄目だ」
容赦なく言い捨てる。
「今の……何だ?」
まだ呆然とした声で、アィルが呟いた。
レイン以外の視線が、ディリクに集まる。
彼は暫くの逡巡の後、一言言った。
「虚ろだ」
「聞いたことがない」
怪訝そうにアィルが言う。
「……虚ろなものを好み、喰らう。名前自体、まだはっきりとしていない。……暫く前に南の施設から出たやつだ」
その言葉に、ヴィオルウスとオルカーンが身体を強張らせた。
「あ、んなの……が?」
呆然とオルカーンが呟く。
「ルベア、は……?」
弱々しい声で、レインが囁く。
ディリクはそれには応えず、険しい表情でルベアが消えた跡を睨みつけていた。
ずるり、と闇が沈む。
見回してもあるのは暗闇ばかりで、踏みしめる感覚さえあやふやで、床すら消えてなくなったようだった。
何処が前かすらわからない。
ため息を吐きながら、歩を進めようと身体を動かす。
途端、ずしりと肩に重い衝撃があった。
「お前の虚は美味そうだなァ」
絡み付くような声が響く。
耳元、から。
「!?」
驚愕に身体ごと振り向きながら、剣を抜く。
くすくすと、笑い声が周囲に散った。
「俺はそんなものでは斬れないなァ」
声は反響しているかのように遠く、近く、場所が特定できない。
「誰だ」
鋭く周囲に問いかける。
一歩踏み出そうとして、違和感に気づく。
重い。
周囲の闇に圧し掛かられるように、身体が重く感じた。
構えた剣の切っ先が下がっていく。
気力が、削り取られていく。
がくりと膝を突いた。
重さに比例して、笑い声が大きくなっていっている。
何が。
これ程に重いのか。
「……く……」
ぎり、と歯をかみ締める。
それでも、重さは軽減されない。
ゆっくりと、身体が傾ぐ。
どこが床か分からない。
けれど。
ルベアはその場で、崩れるように倒れた。
その周囲から、闇がまるで生き物のように倒れた身体へと群がった。
ゆるく目を開いたまま、彼は投げ出された手が闇に飲まれて見えなくなっていくのを見ていた。
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